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菅野敦夫 / 丹青社 - withコロナ。これからの働き方を探る Vol.5

コロナ(COVID-19)が世界的に猛威をふるい、わたしたちの働き方、生活も変化を余儀なくされました。オフィスには出社できず、多くの会社がテレワークにシフト。

急激な変化に対応するなかで、「働く人を応援し、幸せになる」をミッションに掲げる丹青ヒューマネットは、改めて働くことについて考えてみたく、建築・デザイン業界に従事されている方々にお話しを伺っていきます。

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文:吉岡奈穂 取材・編集:石畑和恵(丹青ヒューマネット)

公開日:2020/9/24

 withコロナ。これからの働き方を探る 

丹青社 CMI(クロスメディアイノベーション)センター センター長 菅野敦夫
 

--PROFILE

1959年生まれ、神奈川県出身。日本大学理工学部卒業。1989年丹青社入社。

舞台・映画美術に携わった経験を活かし、入社後には博物館や科学館など文化空間の展示内装の制作業務で実績を積む。その後、購買部門の責任者としてさまざまな分野のプロフェッショナルとのネットワークを構築し、空間演出とICT技術のコーディネートを促進。

クロスメディアインキュベートセンター(現CMIセンター/クロスメディアイノベーションセンター)を組織し、研究開発・実証拠点「港南ラボ マークスリー[Mk_3]」を新設するなど、より新しく質の高い体験を得られる空間づくりに取り組んでいる。2017年より現職。





1.丹青社はどのような事業をしている会社ですか?

——こころを動かす空間をつくる丹青社

戦後活気づく百貨店の店内装飾を東京・上野で手がけたことからスタートした空間づくりの会社です。

1970年万国博覧会(大阪)のパビリオンづくりの実績をきっかけに、創業以来70余年、総合ディスプレイ業のフィールドを広げてきました。

現在は「未来創造ゲートウェイ」をデザインコンセプトにした品川の本社オフィスを主な拠点に、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うさまざまな空間づくりの課題解決を行っています。

調査・企画、デザイン・設計、制作・施工、運営まで一貫して、日本全国の「こころを動かす空間づくり」への取り組みを続けています。

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tansei_3.jpg本社オフィスのテーマを「未来創造拠点」、デザインコンセプトを「未来創造ゲートウェイ」とし、空間づくりのプロフェッショナルであり続けるために知的創造性(クリエイティビティ)と業務効率の向上に取り組んでいる。

 

2.CMIセンターはどのような事業をしているセクションですか?

——空間づくりのデジタルシフトを実行する専門チーム

多岐にわたる空間づくりの事業を行う上で丹青社をパートナーに選んでいただくためにはどのような付加価値を提供できるか。そのとき「演出技術」に着目し、新しく編成したのがCMIセンターの原点です。

単なる表現としての演出技術ではなく、全体の企画・戦略といった川上の段階から演出技術の視点を盛り込んで、空間・体験づくりのデジタルシフトを実現する専門チームですね。

組織の立ち上げ当初はCMI=クロスメディアインキュベートを表していましたが、いわゆるインキュベート(孵化)のフェーズは終了し、いまはCMI=クロスメディアイノベーションを意味しています。

メンバーはプロデューサー、プランナー/デザイナー、エンジニア、CGクリエイター、演出技術スタッフ、ICTキュレーターで構成されています。

空間づくりにさまざまなかたちで直接関わるメンバーに加え、多彩な分野のテクノロジーやクリエイターに対してアンテナを張り、異分野とのコラボレーションや研究開発活動を通じて新たなソリューションの開発を推進するICT専門のキュレーターを多く抱えているのは、わたしたちのセクションの特徴です。

 

3.CMIセンターが手がけた具体的なプロジェクトにはどのようなものがありますか?


——積極的な協業を活かし、日本全国さまざまな空間を手がける

2019年にリニューアルオープンした滋賀県の「ヤンマーミュージアム」では、施設の導入となるマッピングシアターから、館内にこれでもか!と展開されているテクノロジーを駆使した体験コンテンツや、それらをネットワークでつなぎスコア化するシステムなど、企画から設計・制作まで一貫したプロデュース/ディレクション体制のもとCMIセンターがお手伝いしました。

「福岡ヤフオク!ドーム(現・福岡PayPayドーム)」では、球場内の熱気をコンコースにも持ち出して行こうとさまざまなエンターテインメント要素を取り入れ、全周約400mのコンコースを彩るサイネージビジョンの企画からソフト制作、システム設計・制作を担当しました。

「三井アウトレットパーク入間」ではラウンジスペースに子ども向けの体験型アトラクションを導入しました。

そのほか「肥前さが幕末維新博覧会」「三菱ケミカルホールディングス ショールーム『KAITEKI SQUARE」』」「大阪国際空港(伊丹空港) 」のモニュメントとなるサイネージなど、商業施設やパブリック施設、オフィス、常設展示施設や期間限定のイベント等、日本全国さまざまな場所にCMIセンターが携わった施設があります。

また、常に最先端の技術を取り入れるためには、ネットワークづくりや協業も大切です。

最初にパートナーとなったのが、プロジェクションマッピングをはじめ最新の映像演出に特化した技術をもつ、アシュラスコープインスタレーション。続いて“ファッション×テクノロジー”で新たなファッション体験の創造を続けるアンリアレイジです。

NTTドコモとの協業では、ドコモのもつモバイル空間統計®から取得できるビッグデータやICT技術・ソリューションを空間づくりに活用して新たなコミュニケーションを生み出すことが狙いです。

国内に限らず、海外とのコラボレーションも計画中です。

tansei_Y.jpg『ヤンマーミュージアム』(事業主:ヤンマーグローバルエキスパート株式会社)
ヤンマー創業100周年記念事業の一環として2013年にオープンしたミュージアムを、同社のリブランドプロジェクトのクリエイティブディレクターを務める佐藤可士和氏を総合プロデューサーに迎え、「やってみよう!わくわく未来チャレンジ」をコンセプトに一新。既存の建築を一部増築し、コンテンツについてはほぼ全面リニューアル。丹青社は展示企画、デザイン・設計、制作・施工、システム・コンテンツ企画・制作を担当。ヤンマーの事業フィールドや目指す社会をテーマにしたコンテンツを揃え、長きに渡り受け継いできたチャレンジ精神を様々な体験を通じて育む企業ミュージアムとなった。

tansei_F.jpg『福岡ヤフオク!ドーム』(現・福岡PayPayドーム)(事業主:福岡ソフトバンクホークス株式会社)
福岡ソフトバンクホークスの福岡移転30周年を迎え、地元ファンに加えて海外からのお客さまも増加し観客のスタイルも大きく変化。ドーム完成から26年が経ち、更なるエンターテインメント空間への進化を目指して、これまでにない大規模改修プロジェクトがスタート。設計期間も施工期間も超短納期という条件の中で事業主様の要望を実現するため、チーム一丸となって調整を図った。

tansei_H.jpg 『肥前さが幕末維新博覧会』(事業主:肥前さが幕末維新博推進協議会)
明治維新150年を記念して佐賀県内各地で開催された「肥前さが幕末維新博覧会」のメインパビリオンである「幕末維新記念館」、テーマ館である「リアル弘道館」「葉隠みらい館」の空間づくりを丹青社が担当。10ヶ月の会期の間に、佐賀県内はもとより、国内外から多くの来場者が集まり、3館累計で約63万⼈、博覧会全体では224万人を超えた。

4.仕事の面白さはどんなことでしょうか?

——多彩な領域と関わり、変化、進化していく

ライヴ感でしょうか。

いまは事業主様も、従来のやり方にこだわるのではなく、さらなるデジタルシフトが必須だと考えている。

一方で、デジタル技術を使った商品・プロダクトや技術そのものを持っている企業からは、それらをデザインや空間へ実装するにあたり、ご相談いただくことが非常に多い。

そこでお互いの得意分野を活かして、同じ方向を見て一緒になって事業主様の課題解決のためのプロジェクトを進めていけることが面白いです。

さまざまな領域の人たちとチャレンジできるのも刺激的ですね。めまぐるしいスピードで次々と新しい技術や表現が出てくるので、それらを実際に体感した上で空間に応用できないかと考えて、かたちにしていくのもほんとうに面白い。

CMIセンターで手がける空間は世の中の変化や進化とともにあるというのが最も楽しいところかもしれません。

 

5.コロナ禍を経て仕事に変化はありましたか?

——空間のあり方も、足を運ぶ理由も変わる

非常にありました。集客施設が予約制になるなど、人数制限が必要になったこともあり、企画から仕組み、技術まで、各方面からお問い合わせが増えました。それぞれのケースに基づいてリアルとバーチャルをつなげていくことが、いままで以上に大切になっています。

センシングひとつとっても、いま切実に求められているのは、適切な入場者数で施設を運営するためのもの。集客を増やすことが目的だったものが、限られた人数のなかで賑わいを作ることに目的が変わるというのは想像もしなかった変化です。

ショッピングもライブコマースがさらに人気を集めていますし、今後もネット上に感度の高いお店を作って、お店のスタッフがお客さまのご自宅に電波を通してお伺いをして、クローゼットの洋服を見ながら買い物を進めるなどというように、商業そのもののあり方も大きく変わっていくと思います。

一方、オンラインでカバーできることが増えても、演劇、音楽、スポーツ、アートなど、その場に身を置いてリアルで見たい、感じたいという欲求は消えないはずです。

魅力ある場を作って世界中に発信し、「予約してでも時間がかかってもお金を払ってでも、とにかくその場に行きたい」と感じてもらう空間づくりもますます重要になると思います。

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「MYCLO(マイクロ)」
商品を試着した姿を撮影・比較・保存し、スマートフォンから履歴にアクセスできる新たなデジタルミラーを開発。試着画像を通じたECサイトの利用機会増加のほか、商品の試着回数および購入数のデータが取得できるようになり、その後の販促・サービス展開につなげられる。「MYCLO」の仕様や機能は店舗ごとにカスタマイズが可能で、店舗のフィッティングルームや売場に設置でき、店内の鏡として小型店舗にも導入できる。



6.コロナ禍を経て働き方に変化はありましたか?

——自社ラボを活用しながらの、リモートワーク


2015年の本社移転を機に、多様な働き方に対応するため全社的にハード・ソフトを整備し、働く場所を選べる「テレワーク制度」や、勤務開始時刻を日ごとに変更できる「シフト勤務制度」を取り入れていました。

そのため、コロナ禍で自粛要請が出る前から、既に全社員リモートワークが可能な状況にあり、活用も進んでいました。

CMIセンターに限っていえば、本社から歩いて10分くらいのところに、空間演出技術を応用した研究・実証・協働をする場として「港南ラボマークスリー[Mk_3]」を運営しているんですね。

ミーティングや作業はオンラインを基本にしながら、アイデアをリアルな空間で具現化したい場合はこのラボを活用するというワークスタイル自体は、実はそれほど変わっていません。

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tansei_MK4.jpg港南ラボ マークスリー[Mk_3]
『空間×技術(空間と技術の相乗)』をテーマに、空間とテクノロジーの連携による新たな価値創出を目的とした会員制の共創の場。CMIセンターをはじめ、ICT、VRやAR、インタラクティブ技術、映像・音響技術などの分野において先端的な技術・コンテンツをもつ企業やクリエイターとともに空間演出技術を応用した研究開発・実証を進める拠点。

 

7.いまCMIセンターで求めているのはどのような人材でしょうか?


——技術分野、演出分野の方と働きたい

これからの空間づくりは、今まであまり接点がないと思われていた技術・デジタル分野の方にとって大きな活躍の場のひとつになると思っています。

ICTに造詣が深くて、ゲームやシステムを一から作れるとまではいかなくても、さまざまなソフトやアプリを抵抗なく触れる方、あるいはデータの分析なども楽しめる方を積極的に仲間に迎えたいですね。

もうひとつは演出分野の方です。演劇、ミュージカル、バレエ、オペラ、歌舞伎などジャンルは問わず劇場や舞台に興味がある方。スターウォーズの世界観が大好き!というのでもいいです。

わたし自身も下北沢にある演劇専門の劇場の舞台美術に携わっていたのですが、自分たちの手で舞台という空間を作り上げてきた経験はいまも活かされています。

空間づくりの会社なので、建築やインテリアを得意とする人材はたくさんいるため、それは入社してからいくらでも勉強できます。

自分の得意なことを唯一無二の空間づくりに活かすにはどうしたら良いか、試行錯誤しながら新たなことに一緒に挑戦していける方がいいですね。

 

 

8.今後CMIセンターはどんな方向に進んでいきますか?

——豊かな体験や価値を生む、プロデュース集団を目指して

大型テーマパークのように魅力的なストーリーを描いてエンドユーザーを引き込むこと、見えないものの価値を可視化すること、空間づくりとテクノロジーをアイデアで最適化することを通して、情報発信型の空間からより体験型の空間をつくっていきます。

そしてこれまで培ってきた場づくりによる課題解決力に、訪れる方たちの時間を彩るテクノロジーやアイデアをクロスし、豊かな体験や価値を生み出します。

目指すのは、“Cyber Physical System”ですね。フィジカルとサイバー、アナログとデジタル、リアルとバーチャルが融合することで生まれる新たな体験が、空間の価値をより高めていくでしょう。

真摯な空間づくり・体験づくり通じて、訪れるエンドユーザーのみなさまのこころを動かすこと。社会にイノベーションを創出すること。事業主様のブランド価値を向上させるプロデュース集団になること。これがCMIセンターの使命だと思っています。


 

——取材を終えて

20数年前に、幕張駅近くの現場管理をしていた時、休憩で入ったお店でお会いしたのが最初でした。当時を思い出すと、お互い若かった!

これまで、菅野さんは、制作管理職の仕事を通じて、会社の成長と共に重要な役割を担ってきました。現在は培ってきた経験をクロスメディアイノベーションセンター長として、丹青社の未来創造に力を注いでいらっしゃいます。

インタビューにもあったように、コロナ禍、密を避けるためにICT技術を活かした空間づくりの知恵が求められているとありましたが、これからのセンターの成長がとても楽しみです。

 

株式会社丹青ヒューマネット

石畑 和恵

 

株式会社丹青ヒューマネットは、「働く人を応援し、幸せになる」をミッションとし、建築・インテイリア業界へ人材を輩出しています。人材のことで課題をお持ちの企業様、新しい働き方をお探しの方はこちらへご連絡ください。

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