2.新しく入った「VUILD」と、自分の事務所の「POINT」、それぞれどんなことをされていますか?
——VUILDでは、家具以上建築未満なスケールでのデザインを
VUILDは木材加工を中心としたデジタル技術を活かして、誰もが「自分の暮らし」を「自分で作れる」社会を作るために以下の3つの事業を行っています。
具体的にはデジタル建築の開発・設計。分散型製造ネットワークを実現するためのCNCルーターの販売・人材育成。デザインから製造の流れを変革するデジタルツールの開発で、わたしは建築設計の部門に所属しています。
私個人としては、楽しく心地よい居場所をデザインすることと、家具以上建築未満なヒューマンスケールでの空間デザインに興味があることから、具体的には、建築と家具の中間スケールのプロジェクトに携わっています。
20代のスタッフが中心という若さと勢いのある会社なので、自分の経験や実績を活かしてディレクション的な関わりをしています。スタッフは若いですがデジタルネイティブで設計から製作までをこなす守備範囲の広さに驚きながら、こちらも日々勉強させてもらってます。
あとは、VUILDならではの環境を活かしながら営業することも期待されているので、そこも積極的に進められたらと思っています。
——POINTでもクラウドプレカットサービスを活用したい
VUILDの活動と並行して、POINTの仕事としては、住宅のプロジェクトを他の設計事務所と共同でやっています。
あとは母校である慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスOBの有志で、グループワークなどができる学生のための宿泊学習施設を設計しています。
これから手掛けようと思っているのが、VUILDがリリースしている日本初のクラウドプレカットサービス「EMARF」を活用して、POINTのオリジナルプロダクトをデザインすること。
CADで設計した建築部品のデータをオンラインでアップロードするだけで、即座に見積もりがわかり、加工してお届けできるので、POINTの仕事でも活かしたいです。
3.仕事の面白さはどんなことでしょうか?
——流儀のある人、挑戦している人と関わること
自分たちの流儀があり、それが作ったものに現れている人たちと仕事をするのが面白いです。流儀を貫き続けていくのは大変なことだけれど、必ず共感する人もいる。
あとは果敢にいろんなことに挑戦している若い人たちと関わるのも面白いです。
VULIDに参加したのもそれが大きいですね。みんなが最先端のデジタルテクノロジーを使いつつスピーディに、プロジェクトを進めている。ディレクションという立場で入りながら、プロジェクトを担当している案件もあり、新しく3Dのモデリングソフトを学びながら仕事をしている日々です。
秋吉社長は、35歳以下の若手建築家による建築の展覧会「Under 35 Architects exhibition 2019」で、ゴールドメダルを受賞していますが、建築の目線と経営の目線を持っていて、三十分刻みの多忙な打合せでも、常にゼロベースで考え、ボールを遠くに投げてくるので、大変ですが刺激を受けます。
4.人との関係で大事にしていることは何ですか?
——素直、正直、謙虚な話し合い
思ったことを素直に、正直に、謙虚に言うことです。
難しいことももちろんありますし、常にその通りにできているかはわかりませんが、心がけています。みんながそうできたら、社会全体がよくなると思う。
日本人は遠慮しがちで忍耐力もあるぶん、その歪みがいまいろんなところに出てきていると思う。特定の人たちだけの利益にしかならないことが平気で罷り通ったり、都合の悪いことがコントロールされたり、でも指摘しづらかったり、そのような同調圧力がじわじわと世の中に広がってしまう。
この状況をよくしていくためにも、自分も含めて誰もが「素直に、正直に、謙虚に」話し合う関係がとても大事だと思います。
5.コロナ流行を経て、変化はありましたか?
——オンラインの可能性、屋外活動の可能性への気づきが
いままで移動していたことが不思議なくらいに、打合せはすべて家にいながらオンラインでできてしまうことに気づきました。その分、かえって打合せの数も増えて、仕事をしている時間も増えたような気がします。
可能性を感じたのはオンラインセミナーですね。会場に行き来する必要もなく、仕事をしながらラジオ感覚で気軽に聞けるし、コストパフォーマンスはとても高いと思いました。
いままではセミナーイベントと言えばまず場所を抑えることが負担になっていましたが、もはや物理的な場所に依存することはなく、数十人、数百人が気軽に集まれる。
自分が持っているコンテンツを誰もが気軽に発信したり、シェアできるので、新しいビジネスやネットワークが生まれてくると思います。
パブリックスペースの在り方も変わると思います。三密を避けるために、いままで室内で行われていたあらゆる活動をひっくり返して、全て屋外でやってみる。ビジネスの会議とか、学校の授業とか、これを機に屋外を積極的に利用して、社会実験的なプロジェクトを試せたらよいのではと考えるようになりました。
6.今後どのような変化が起きると思いますか?
——自分のリソースであらゆる手立てを打ってみよう
数ヶ月先の状況すら見えない時代になったので、状況に合わせて変化し続けることがより重要になると思います。
以下は人のBLOGの受け売りですが、例えば今とても厳しい飲食店も、客が来ないということを嘆くのではなく、冷静に自分たちのリソースを棚卸しして、何ができるかを考える。食材を仕入れるプロであることを活かせばテイクアウトやデリバリーはもちろん、新しいサービスも考えられるチャンスです。
全部が成功する訳ではないかもしれないけれど、自分のリソースを活かして、あきらめずに、あらゆる手立てを打つことで、その中から突破口を見出していく。常に立ち返るべきは、「自分が持っているスキルで、どうやって人に喜んでもらうことができるか」に尽きると、そのBLOGには書いてありました。
本質を追求して、挑戦したり、発信したりという人が増えていくのではないでしょうか。
7.どんな人と働きたいですか?
——結局は相性が大事かもしれない
大前提として、素直で謙虚でポジティブな人と仕事をしたいです。素直さはよく言われることですが、やはりとても重要ですよね。その上で、自分の流儀やこだわりがある人と働くのは非常に刺激になります。
とはいえ実際はそんなに人は単純じゃなくて、結局相性だったりもします。理想とはぜんぜん違う人と気があったりするのは、理想からこぼれる思いがけないところに魅力を感じたりするわけですから。
——取材を終えて
お会いするといつも元気をもらう長岡勉さん。10年来の付き合いになりますが、身体スケールで人が過ごす場を考えることは楽しいことだよと、教えてくれる方です。
好奇心旺盛でチャレンジングな長岡さん、この数カ月間の間に、新たな企業に参画するということを始めていました。若い同僚からの刺激を受けて、3Dのソフトを習得するなどこれから起こるであろう、建築業界のDXを正に体現していることに驚きと敬意を持ちました。
インタビューの中にもありましたが、屋外活動の見直しなど、コロナ禍、新たな価値観を創出していくのは長岡さんに違いないと思った次第です。
これまでの経験と持ち前の好奇心が新たなアイデアを生み出し、世に出てくるのを楽しみにしています。
株式会社丹青ヒューマネット
石畑 和恵
株式会社丹青ヒューマネットは、「働く人を応援し、幸せになる」をミッションとし、建築・インテイリア業界へ人材を輩出しています。人材のことで課題をお持ちの企業様、新しい働き方をお探しの方はこちらへご連絡ください。