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中川エリカ /建築家 - withコロナ。これからの働き方を探る  Vol.3

コロナ(COVID-19)が世界的に猛威をふるい、わたしたちの働き方、生活も変化を余儀なくされました。オフィスには出社できず、多くの会社がテレワークにシフト。

急激な変化に対応するなかで、「働く人を応援し、幸せになる」をミッションに掲げる丹青ヒューマネットは、改めて働くことについて考えてみたく、建築・デザイン業界に従事されている方々にお話しを伺っていきます。 

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 @yujiharada 
中川エリカ建築設計事務所 南米チリへリサーチへ行った際の集合写真(左:中川エリカ 現在スタッフは3名 )
 
 
文:吉岡奈穂 取材・編集:石畑和恵(丹青ヒューマネット)

公開日:2020/07/20

 withコロナ。これからの働き方を探る 

 中川エリカ建築設計事務所 代表 中川エリカ

 

--PROFILE

1983年東京都生まれ。2005年横浜国立大学工学部建築学科卒。2007年東京藝術大学大学院美術研究科修了。

2007~2014年(株)オンデザインパートナーズ勤務。2012年横浜国立大学非常勤講師。2014年中川エリカ建築設計事務所設立。2014~2016年横浜国立大大学大学院Y-GSA設計助手。

現在、横浜国立大学、法政大学、芝浦工業大学、日本大学大学院非常勤講師。JIA新人賞、吉岡賞、住宅建築賞金賞、U-35ゴールドメダル、 Toyo Ito Prize(伊東豊雄賞)など受賞多数。

 




 

1.日々、どのようなお仕事をされていますか?

——住宅を中心にした建築設計

複数の建築設計プロジェクトを手掛けています。もともと住宅設計を中心とした事務所で働いていたこともあり、住宅の仕事は常に動いています。企業の方から依頼を受け、ゼネコンとチームを組んでオフィスの設計もします。

デベロッパーの商品開発として、建築の知恵を活かしながら新しい住み方を模索し、集合住宅の間取りを考えていくようなプロジェクトにも携わっています。

今後、「TOTOギャラリー·間」で個展を開催する予定なので、いまはその準備も進めています。

  

2.なぜこの仕事を選んだのでしょうか?

——好きなもの、楽しいものからつながって

大学受験の際、微分積分が大好きで数学が得意だったことから、理系に進学することは決めていました。手を動かしてものを作る図工も好きだったので、どちらも活かせそうという理由から建築学科に進学しました。

学生時代は、設計課題も模型作りもとても楽しくて、しかもやればやるほど自分に返ってくる。そのまま大学院に進み、実感が持てるスケールの建築を作りたいと考えたことから、いまに至っています。 

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 ヨコハマアパートメント @Koichi Torimura 
*西田司/オンデザインと共同設計

 

3.仕事の面白さはどんなことでしょうか? 

——建築を通じて学ぶすべてが面白い


新卒の頃から、何もわからないまま現場に出ていました。当然、周りの職人のみなさんのほうが知識も経験もあるわけで、そんな方々に建築を通じて、作り方からもはや生き方までを教えてもらえるのが面白かったです。

現場とコミュニケーションを取ることで、どう図面を描いて、どうやって伝えたらわかりやすいのか、効果的かを学んでいくのも面白くて。

独立前の前職で代表である西田司さんと共同設計をした「ヨコハマアパートメント」が専門誌に掲載されて自覚がないうちにデビュー。受賞までしてしまいました。

“作る側”としての経験が圧倒的に足りなかったため手に汗握る進行でしたが、逆に“使う側”の目線が活かされた。

結果、反響や評価、たくさんの批評をいただくことができました。あのとき、西田さんが小躍りして喜んでいたのが印象に残っています。

 

 

4.仕事で大事にしていることは何ですか?

——すべては模型から始まる

中川事務所の大きな特徴は、模型でのスタディを徹底することです。

図面も書かずに、いきなり段ボールで模型を作る。その模型をもとに、構造や動線などを確認してから図面で整えるという順番で、設計のプロセスを模型中心に詰めていきます。

あらゆる敷地は広さも形も条件も違うし、周辺環境の影響も受けるため、建築だけではなく敷地がある街や土地の歴史も視野に入れながら、まず第一段階で“フレームの組み立て方”を決めます。

第二段階では“フレームの使い方”をイメージし、家具や設備はもちろん、そこで起こるアクティビティや居場所のサイズも検討していきます。

模型にこだわる理由は、思いも寄らない新しい組み立て方が発見できることですね。図面や言葉では表せないことも検証できますし、クライアントへのプレゼンテーションはもちろん、構造や設備の専門家、施工者と打ち合わせをするときにも便利です。

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 ヨコハマアパートメント @Koichi Torimura 
 *西田司/オンデザインと共同設計

 

5.コロナ流行を経て、仕事における変化はありましたか?

——模型が大切な理由を再認識

メインワークである模型を全員で囲んでいろんな方向から覗き込んだり、スケールを把握できないことが大変でした。

家で考えたものを事務所で組み立てるだけだと、模型を作ること自体が目的になっていたり、作業になってしまう。わたしが模型にこだわる理由は、新しい発見をして、豊かな使い方を提案する創造のためなのだということを再認識しました。

すでに道筋が見えているものは家でもオンラインでも進められるのですが、ヴィジョンを探求中のものは、やっぱりパソコンの中だけで、スケールがないまま方針を発見していくことは難しい。

完成形がどうなるかわからない状態で、模型というスケールあってこその道具を使いながらディスカッションを重ねることの楽しさも改めて実感しました。

 

——身体スケールも変わってくる

建築を通して暮らしの豊かさを提案していますが、長い自粛生活を経たことで日常生活の豊かさについて再考した人も多いと思う。新しいニーズが生まれてくると思うし、発展の時期かなと思います。

屋外ではソーシャルディスタンスが常識になり、2mの距離を確保するというのは、日常的に小さな避難を続けていくようなもの。快適さを感じる距離も変わるし、身体スケールも変わっていくと思います。

具体的なプロジェクトでいえば、コロナ禍による手洗いに対する意識の変化をふまえ、地域に密着した商業施設における水回りの場をどうアップデートしていけるかというプロジェクトが始まりました。

 

——場所を使い分け、周囲を巻き込んで働く

6月時点での働き方は、スタッフを含め、基本的には家と事務所が半々です。プロジェクトのフェーズ、重なり具合にもよりますが、働く場所は家か事務所かという2択ではなくてもいいし、100%事務所にいなくてもいい。

もともと外にリサーチに出かけるなど、インプットも大事な仕事の一環だと位置づけていたので、どこで何をするのがいちばん合理的か、働く場所の使い分けが進むかもしれません。

それと、私は現在2歳の息子がいるのですが、何もかも一人で乗り切ろうとするのは難しいので、子育ても仕事も、周りを巻き込みながら協働してくれる環境をつくることが大事だと考えています。息子が1歳になるまでは事務所へ一緒に通勤していたので、スタッフも子育てに参加していました。

事務所一同でリサーチのために南米のチリへ行ったときは、大人の目と手がたくさんあるので、私としては安心だし、息子も遊び相手がたくさんいて楽しそうでした。

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 桃山ハウス @Koichi Torimura 

  

6.どんな人と働きたいですか?

 

——違う視点や意見を持った人

自分と違う視点や個性を持った人です。みんなが同じ意見だったらディスカッションは広がらない。どういう価値が求められるかを一概に言えない時代だからこそ、さまざまな角度から意見を交わせる人と働きたいです。

自分で考えて行動できることはいつの時代も必要だと思いますが、行動の仕方にはバリエーションがある。全員がリーダータイプである必要もなくて、どんなネタを振られても柔軟に返せる人、能動的にリアクションができる人も大切だなと思います。

建築を通して出会うことができた方々とは、なるべくその縁を繋いでいきたい。

残念なことに、最近は少なくなりつつありますが、自分に向かって本気で怒ってくれる人は貴重なので大切にしたいです。

 

  

7.今後やっていきたいことはありますか?

——ひとつひとつの仕事を楽しんで


具体的に「これを建てたい」ということはないんです。

どんな仕事でもそれぞれに面白さがあるので、お声がけをもらったら何でもやりたいです。住宅、オフィス、設備、プロダクトなど、スケールを横断しながら、自分でも知らなかったことをかたちにしていきたい。

建築を通して知らなかった面白さに行き着くことが好きなので、すべてのプロセスを楽しんでいきたいです。

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 桃山ハウス @Koichi Torimura

 


 

——取材を終えて


WEBでのインタビューでしたが、いつもと変わらず元気な中川さんの姿を感じることができたことは新しい発見でした。

コロナ禍、中川エリカ建築設計事務所の売りともいうべき身体スケールでの模型製作がどうなっているのか気になっていましたが、そこはお見事。所員の安全を守りながら変わらず進めていらっしゃいました。

改めて、人に対する価値観も「違うことが大事」ということには共感持ちました。常に創造していくことに対して貪欲であるからこそ、違うことが大切であると考えているのだと思います。

これから、大いにその価値観や仕事の作法を活かして様々な仕事をされることを期待しエールを送りたいと思います。

 

株式会社丹青ヒューマネット

石畑 和恵

 

 

株式会社丹青ヒューマネットは、「働く人を応援し、幸せになる」をミッションとし、建築・インテイリア業界へ人材を輩出しています。人材のことで課題をお持ちの企業様、新しい働き方をお探しの方はこちらへご連絡ください。

 

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