お祭り好きな人にとても楽しい、イベントや空間演出にまつわる仕事 (ユタカ 前田宏幸)/10代のみんなへ伝えたい、空間づくりの仕事 Vol.5
onefabricaで作られた展示ブース。設営時間も非常に短く、効率的。
文:吉岡奈穂 取材・編集:石畑和恵 岩崎美紀(丹青ヒューマネット)
公開日:2021/5/17
10代のみんなへ伝えたい、空間づくりの仕事
駅や学校などの大きな建物から、自分の家まで。わたしたちが日常の大半を過ごしている「空間」をつくる仕事には、どのようなものがあるのでしょうか。
さまざまな空間づくりの場に人材を派遣している丹青ヒューマネットから、中学生や高校生のみなさんに向けて、空間に関わる仕事を伝えるインタビュー企画をお送りします。
今回はユタカ株式会社にて、事業管理グループのマネージャを務める前田宏幸さんにお話を伺いました。
--COMPANY PROFILE
空間づくりのコーディネーターとして、新たな空間を装飾し、施工を実現する「one fabrica」によって質が高く環境負荷の少ない空間づくりを推進している。
イベントソリューションには豊富な実績があり、企画や運営から施工までをワンストップで対応。
そのほかの提供サービスは、電気やインターネット回線の工事、特殊什器の販売やレンタル、リノベーション、LED照明販売など。
ユタカの事業内容について教えてください。
2019年までは「イベント」という軸での美術施工や設営、装飾、企画や提案が主な事業の柱でしたが、2020年のコロナ流行により新しい生活様式が始まったことで、「空間演出」へと事業領域を広げました。
わたしたちが持っているノウハウや技術は、イベントに限らずショールームやレストラン、オフィスなど常設的な空間に対しても役立てるはずなので、お客さまのニーズに合わせてあらゆる空間を手掛けるということに新しい一歩を踏み出したところです。
会社の事業内容を再定義するというのは大変なことですか?
緊急事態宣言の発令中など、リアルで開催できるイベントはゼロという時期もありましたし、いまでも以前と同じように人を集めることはできないので、強制的に事業を見直すタイミングになったというのが正直なところです。
もともとイベントに依存しすぎると何かのときにリスクヘッジができないのでは?新しい取り組みもするべきでは?という考えもあったのですが、うまくいっているときには変化の必要性に迫られないので、今回まさに有事のことが起きて、社員全員が意識を変えざるを得なかったことをポジティブにも捉えています。
この状況を乗り越えるために、いままで以上に各部署が連携するようになるなど、結束が強まったようにも感じました。
そんな中で、いま特に力を入れている取り組みがありますか?
「one fabrica」という商品の展開に力を入れています。軽量のアルミパイプを組み合わせて表面を布で仕上げる構造物なのですが、女性でも簡単に持ち上げられるほど軽くて、木工では難しいような曲げたり吊るしたりというデザイン面での柔軟性もある什器です。
アルミも布もリユースができますし、基本的に廃棄物が出ないので社会の需要にも合っていますよね。
例えば先日、「故人を偲ぶ会」の屋外セレモニーを某フェリーふ頭の駐車場でドライブインシアター形式で実施し、会場装飾は大型のスクリーンも含めて「one fabrica」を使いました。Webサイトでも大きく扱っているので見てもらえたら嬉しいです。
「one fabrica」はどうやって広めていくのでしょうか?
設計事務所やデザイン事務所の方に、越中島アトリエまで足を運んでもらって、実際に見たり触ったりしてもらって、実物を体験していただければと思います。形状の自由度やプリントの発色感、素材の触感や軽さなど、確かめていただくのが一番だと思うので。
ちなみに越中島アトリエで働いているスタッフは20代が中心で、みんなで楽しく働いていて、その様子も見てもらえると思います。
「one fabrica」はアメリカ人スタッフと開発したのでいまでも英語のやりとりもあるのですが、英語が話せなくてもGoogleを使ってコミュニケーションをとったりしています。
感染対策への取り組み商品なども扱われ始めたのはなぜでしょうか?
イベントは減ったとはいえゼロではないですし、人には「出かけたい、集まりたい」という本質的な欲求があると思うんです。
実際にホテルを始めとして需要もあるので、ウイルスを不活化する紫外線、光触媒、オゾンを活用したアイテムなど幅広くラインナップして、安全に集まれる空間づくりも大切にしています。
ただ感染症への取り組みは事業の核というよりは、「いまこの状況だから」ということが大きいかもしれませんね。
仕事の大変さ、やりがいについて教えてください。
イベント事業で言えば、一発勝負のプレッシャーはあります。大きなイベントを準備しているときなど、そうそうやり直しがきくものではないので、本番をきちんと成功させるにはもちろん大変なこともあります。
やりがいはシンプルですが、お客さまに喜んでいただけることです。自分たちが作った装飾の前で楽しそうに記念撮影されているのを見たりするとやっぱり嬉しいですね。
わたしたちは装飾物を通して人の思い出だったり記憶だったりを作っていると思うので、そこに関われるのは幸せです。
どんな人がイベントや空間にまつわる仕事に向いていると思いますか?
ずばり、お祭り好きな人です。文化祭とか体育祭とか、みんなでワイワイ何かを作って当日まで準備するのが楽しくて仕方がない!というタイプの人が向いていると思いますし、社内にもそういう人ばかりが集まっている気がします。
あとはサービス精神旺盛な人というか(面白いことをしたい、相手を驚かせたい、喜ばせたい)という気持ちがある人がいいのかなと。
企業の新商品発表会から、J2リーグの試合の入場ゲート、水族館のアシカショーのステージなど、ほんとうにさまざまなイベントや空間に関わるので、まだ誰もやったことないものをどんどん試せるようなチャレンジ精神や柔軟性も必要だと思います。
10代のみなさんへ向けてのメッセージをお願いします。
数学、物理、化学、古典、世界史などなど、何でこんなにいろいろ勉強するのだろう?これは何かの役に立つのだろうか?と思うこともあるかもしれませんが、わたしは将来のチケットを集めるためだと考えています。
いろんなことに興味を持って広く深く学んだことは、自分の中に溜まっていって、選択肢を広げてくれます。何か問題が起きたときも5枚10枚のチケットを組み合わせることで解決できたり、ここぞというときに切れる強いチケットがあったりしたらいいですよね。
いつどこでどのチケットが役立つかはわからなくても、根気よく集めたチケットは必ず自分にプラスになります。
——取材を終えて
訪問先は、仮組やショールームを兼ねている倉庫を利用した建物で、中は広く使いやすく考えられている場所でした。
気づくと、若い人たちがリズム良く働いている様子がうかがえ、コロナ禍でも、元気に前を向いていると実感できました。
会社が目指す方向を、社員に伝わり理解を深めるまで繰り返すというお話も納得した次第でした。
アイデアをカタチにし、若い人が楽しそうに働いているのは、働くという意味での原点のような気がします。これからのチャレンジも楽しみなユタカさんです。
株式会社丹青ヒューマネット
石畑 和恵
株式会社丹青ヒューマネットは、「働く人を応援し、幸せになる」をミッションとし、建築・インテイリア業界へ人材を輩出しています。人材のことで課題をお持ちの企業様、新しい働き方をお探しの方はこちらへご連絡ください。