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映画のセットをルーツに、CMやレジャー施設までを製作。 (東宝映像美術)/10代のみんなへ伝えたい、空間づくりの仕事 Vol.6


東宝スタジオエントランス “七人の侍”壁画と“ゴジラ”の像

文:吉岡奈穂 取材・編集:石畑和恵 岩崎美紀(丹青ヒューマネット)
公開日:2021/6/23

 10代のみんなへ伝えたい、空間づくりの仕事 

駅や学校などの大きな建物から、自分の家まで。わたしたちが日常の大半を過ごしている「空間」をつくる仕事には、どのようなものがあるのでしょうか。

さまざまな空間づくりの場に人材を派遣している丹青ヒューマネットから、中学生や高校生のみなさんに向けて、空間に関わる仕事を伝えるインタビュー企画をお送りします。

今回は株式会社東宝映像美術にお邪魔し、世田谷区成城の東宝スタジオを見学させていただくとともに、取締役の花輪幸弥さん、企画営業部の長濱卓さん、美術製作部の近藤紗子さんにお話を伺いました。

株式会社東宝映像美術
長濱卓(左)花輪幸弥(中央)近藤紗子(右)

--COMPANY PROFILE


東宝美術と東宝映像が合併した東宝系列の美術製作会社。ゴジラ作品をはじめとした映画美術や特殊撮影のほか、テーマパークや商業施設、イベントなどの美術、内外装飾、植栽計画なども幅広く手掛けている。

また旧東宝映像は、独自のマルチチャンネル光学録音規格「TKL-STEREO」を開発し、日本映画で初めてドルビーステレオの光学録音を成功させるなど、日本映画界におけるサラウンドシステムの普及に大きく貢献した功績も持つ。

 


 

東宝映像美術の事業内容について教えてください。

長濱:
映画や演劇を中心にたくさんのエンターテインメント作品を提供している東宝グループの一員です。

世田谷区成城の東宝スタジオに拠点があり、ここで映画やTVのセットを製作している美術製作部、映像から文化・商業施設の内装、各種イベントの製作など多岐にわたるプロジェクトを手がける企画営業部、日本有数の大型テーマパークでショーセットなどの製作や管理を行っている千葉支店と3つの部門があります。


美術製作部はどのようなことをしていますか?

近藤:
決まっている条件の中で、どうやって要望に応じたものを作りあげるかを試行錯誤しています。

セットは本物を再現するのではなく「本物に見えればいい」のですが、例えば壁を作るのであれば、いくら見た目が壁に見えたとしてもグラグラ揺れたらNGなので、工期や予算に則って適切な素材を選ばなければならないし、もちろん安全であることも外せません。

美術製作部には、セットの製作にはじまり、木工、塗装、園芸、建具、字書きと、さまざまなスキルを持つ職人が集まっているので、一人ひとりとのコミュニケーションを取ってデザイナーやプロデューサーの意向を実現することに日々奮闘しています。

わたし自身は大手飲料メーカーのコーヒーのCM制作などに携わっています。

きちんとしたクオリティのものをあげて、映像に残していくことには、とてもやり甲斐を感じています。

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 左)建具製作室 作業風景 右)塗装部 作業風景

 

企画営業部はどのようなことをしていますか?

長濱:
主にはテーマパークや博物館などの「展示施設」、「商業施設」、「イベント」の3つに分けられます。

テーマに基づいてその時代を体感できるような施設展示製作、映像、音響、照明、デジタル技術を駆使して空間を演出することによって、日本全国にワクワクするような施設を作っています。

文芸作品から特撮まで幅広いジャンルの映画美術を製作してきたので、イベントも得意分野です。ユニークな発想とダイナミックな企画で、さまざまな催しをお手伝いしています。

いままでの実績は下記に掲載していますので、ぜひ見てみてください。みなさまがご存知のもの、行かれたものもあるのではないでしょうか。

> 「東宝映像美術」製作実績はこちら

 

ここまでどのような歩みがあるのでしょうか?

花輪:
創立50周年を迎えた会社です。もともとは映画のセットにルーツを持っていて、時代劇や特撮など、オリジナリティのある技術を活かした製作をしていました。

ただ70年代は一般家庭にTVが普及したり、娯楽の種類が増えたりして、映画が減った時代だったんですよね。なのでその頃にレジャー施設や展示施設、万博などの大規模なイベント、ドラマやCM製作に携わり始めます。

80年~90年台はさまざまなテーマパークが誕生し、また博覧会ブームもあり、 映画製作のノウハウをベースにしてたくさんの施設作りに関わりました。

その後も、全国的にシネマコンプレックスが普及したこともあり、たくさんの映像製作とともに大型の商業施設、室内型のテーマパーク、店舗内装などにも注力しました。

コロナ禍により2020年は新しい生活様式の元年になったこともあり、また変化のフェーズに来ているのかもしれません。

 

デジタル技術の進歩によって製作に変化は起きていますか?

花輪:
CGの発展によって、美術製作については大きく変わりました。

いままで完成したセットを使って演技していたものを無背景で行って、あとから合成すればどんな世界でも作れるためです。それに伴って映画でもCMでも以前より巨大なセットを組む機会は減っていますね。

あとはメディアも変わっています。コロナ禍という状況もあり、配信系映像を中心としたオンラインサービスで視聴する作品を手掛けることが、ここ数年で急激に増えました。

一方で文化施設、商業施設の内装やイベントセットの製作などの空間演出には、それほど変化はありません。

何でもデジタルに置き換えられているいまですが、デジタルは視覚と聴覚がメイン。リアル空間に足を運んで、そこの空気感や香り、手触りを感じたいなど、五感で体験したいという根源的な欲求もあるのだと思います。

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左)小道具、装飾倉庫 右)建具倉庫

 

映像美術の仕事を選んだきっかけや、この仕事の面白さは何ですか?

近藤:
美術系の大学で彫刻を専攻したあと、タイでアルバイトをしながら生活していました。そのときに海外の友人から日本の映画を逆紹介されて興味を持ち、携わってみたいと考えたことです。

面白いところは、スケジュールや費用など決まった条件がある中で、さまざまな人の思惑やスキルを集結させて、質の高いものを作りあげることです。強いこだわりや、激しい個性がせめぎ合いながらセットが完成するのは毎回とてもドラマチック。

幼い子供ふたりを育てながらということもあり、日々が飛ぶように過ぎていきます。

長濱:
大型テーマパークの担当者を募集していたのを見てやってみたいと思い、採用されたあとは現場近くに引っ越して、3〜4年間打ち込みました。

小学生の頃に夏休みの自由工作で、ダンボールでお城を作ったものが市長賞をもらったことがあるのですが、もともと何かをかたちにしていくのは好きだったと思います。

いまでも図面1枚に込められたデザイナーや設計者の思いをかたちにして、そこにお客さまが来て喜んで‥というのを見ると嬉しいです。

花輪:
大学へ進学する際に、何がやりたいかを考えて「映画」にたどり着きました。大学時代に映画をたくさん観たり、シナリオ学校に通ったりしていたことが、この会社で働くことにつながったと思います。

仕事は楽しいことも大変なこともあるのですが、そのプロセスを含めて面白いです。

人と考えが合わなかったりぶつかったりもがいたりしながらも、完成するとそれまでのイザコザも忘れつつ、むしろ衝突したぶんだけ自分が成長したり、関係が深まったりするのが醍醐味です。

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東宝スタジオ敷地内の様子

 

映像美術の仕事は、どんな人に向いていますか?

花輪:
好奇心のある人です。決まったルーティンがなくて、案件ごとに目的も規模もやり方も工期も予算も違うので、その状況にストレスを感じず楽しめる人だと思います。

「楽しめる力」というのは強いですよね。例えば苦手な人とタッグを組まなくてはならなくても、それを嘆いても仕方がないので、それならどうすれば最後に笑えるのだろう?というように、自分で楽しみに変換していくような人かなと。

社内には造形、建築、映像などいろんな柱を持っている人がいますし、個性豊かなメンバーが揃っていますが、それぞれルーティンにはまらない柔軟性があると思います。

長濱:
新しいことを探求して、チャレンジする気持ちがある人です。

工期や予算という縛りがある中で、1枚の紙からベストなかたちを探っていくときに、何が正解なのか誰にもわからないということは多々あります。

その中で初めて使う素材を探したり、試したり、検証したり、試行錯誤が苦にならない人かなと思います。想像力や発想力はもちろん大切です。

 

中高生にメッセージをお願いします

花輪:
自分と違うモノ、コト、ヒトを排除しないでもらえたらと思います。違いがあるのであれば、その違いはどうして生まれたのか、違いを活かし合う方法はないか、自分の中で探求してみてください。

違うものをただ切り捨てていたら一向に世界は広がらない。自分と違うところに着目することは、人生を豊かにする基本になると思います。

長濱:
失敗を怖がらないでください。もしエラーをしたとしても次に活かせばいいだけです。何も動かずに頭の中だけでシミュレーションするのではなく、実際のアクションとして一歩を踏み出してみる。

若いからこそ人の目が気になったりすることもあるかもしれませんが、トライ&エラーを繰り返すことでこそ感じられる手応えが必ずあるので、ぜひ頑張ってください。

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左)その名を世界に轟かせている怪獣王“ゴジラ” 右)“モスラ”壁画

 


 

——取材を終えて

今回は、丹青社とお仕事で繋がりのある東宝映像美術様へ訪問です。

駅から閑静な住宅街を通り抜けると、私たちを「ゴジラ」の像と「七人の侍」がお出迎えしてくれました。 ワクワク感で気持ちが高揚しました。

広告や映画の世界は、コロナ禍でどのようになっているかお聞きしたり、現場の見学をさせていただきました。

現場では、CG技術をを駆使した広告作りで海外との連携を行うなどの、工夫がなされていることが理解できました。 スタジオでは、感染対策を十分にし、多くの方が設営に従事されている姿。

空間づくりに対する熱意を感じました。

時代の変化と共に、新たな映像コンテンツが生まれ、脈々と受け継がれる技術。 いつの時代も、映画や動画配信など映像サービスは私たちに感動を届けてくれるのだと思いました。


株式会社丹青ヒューマネット

石畑 和恵

 

株式会社丹青ヒューマネットは、「働く人を応援し、幸せになる」をミッションとし、建築・インテイリア業界へ人材を輩出しています。人材のことで課題をお持ちの企業様、新しい働き方をお探しの方はこちらへご連絡ください。


 

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