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デザインとクライアントの想いを技術でつなぐ「モノづくり」の仕事(丹青TDC)/ 10代のみんなへ伝えたい、空間づくりの仕事 Vol.8


丹青TDCの社名の由来を紹介しているオブジェ

文:吉岡奈穂 取材・編集:丹青ヒューマネット
公開日:2021/11/17

 10代のみんなへ伝えたい、空間づくりの仕事 

駅や学校などの大きな建物から、自分の家まで。わたしたちが日常の大半を過ごしている「空間」をつくる仕事には、どのようなものがあるのでしょうか。

さまざまな空間づくりの場に人材を派遣している丹青ヒューマネットから、中学生や高校生のみなさんに向けて、空間にかかわる仕事を伝えるインタビュー企画をお送りします。

第8回となる今回は、空間づくりを通して“想いをカタチにする技術者集団”を謳う株式会社丹青TDCから、20代の施工管理者として日々奮闘しているS.T.さん(女性:入社4年目)、H.W.さん(男性:入社6年目)にお話を伺いました。



株式会社丹青TDC

--COMPANY PROFILE


1967年、丹青社の基幹制作会社として「丹青社工作所」設立。
1991年、Technical、Design、Constructionの意味を込めて社名を「丹青TDC」に変更。
商業空間、パブリック空間、ホスピタリティ空間、文化空間、ビジネス空間など、幅広い分野での内装仕上工事を手がける。社員80名のうち、62名が施工管理職を務める。

 

施工管理職の仕事の流れはどのようなものですか?

S.T.:
担当するプロジェクトが決まったら、それを進めるための施工図をCADで書いたり、工程表を作ったり、協力会社さんと打合せしたり、必要なものを発注したりとさまざまな準備をします。

実際に工事が始まると、その期間は現場に通う日々です。無事に引き渡しが終わったら、品質・予算・スケジュールを振り返ってまとめるなどの業務をするというのが大まかな流れになります。

1年のうち8ヶ月くらいが現場、4ヶ月くらいが会社にいる感じです。任される現場の規模は経験年数などによって違いますが、入社4年目のわたしは200〜300平米のオフィスなど、2ヶ月くらいで完成するものが多いですね。年間に4〜5のプロジェクトを担当しています。

 

具体的な業務内容を教えてください

H.W.:
空間のプランニング、デザイン・設計まではデザイン・設計を手がける会社がクライアントと進めます。

施工管理職はそのデザインをかたちにするのが仕事です。デザインに込められた「想い」を的確かつ効率的に実現するために、どのような方法や手順にするか、壁紙や什器、照明や家具はどれにするか、いかにして予算内におさめるのかを総合的に、そして詳細に詰めて、具現化していきます。

いざ現場が始まると、毎朝その日の作業内容を協力会社の皆さんに説明したり、指示を出したりします。手を動かすのは各工程の作業を行う協力会社の皆さんで、僕たちは現場をくまなく回って設計通りに制作されているかを確認して、安全第一でプロジェクトを進めていきます。

完成したらクリーニングをして、検査して、お引渡しする最後まで目を配ります。

現場での様子

 

施工管理の仕事を選んだのはなぜですか?

S.T.:
高3で進路を決めるとき、自分の好きなものを考えたんです。お芝居とか、洋服も好きだったんですけど、ほんとうに舞台で食べていく覚悟があるのか、ほんとうに洋服が作りたいのかと言うとちょっと違うかなと。

あとは部屋の模様替えが好きだったので、インテリアデザインにかかわることをやりたいなと思って、建築デザインの専門学校に進学しました。

就職のときに施工管理職の求人を見つけ、現場がどんなものなのかを知りたいと思って、丹青TDCに入社を決めました。

H.W.:
父が経営しているシャッター会社で高校生のときにバイトをしていて、電動工具に触れる機会があったことはきっかけのひとつです。ものづくりの現場が身近な環境だったので、自然な流れで建築系の専門学校に入りました。

施工管理職として丹青TDCに入社したのは、採用面接のとき人事担当の方に、事例集を見せてもらったことが決め手だったかなと思います。ものすごくかっこいい空間の写真がたくさん並んでいて、自分もこういう空間づくりにかかわりたいと思いました。

S.T.:
わたしも父親が塗装業に従事しています。父はわたしが施工管理という職種を選ぶとは思っていなかったみたいでしたが、いまでは共通の話題がたくさんできたので、塗料の話とか喜んでいろいろ教えてくれます!

男性が多い職場ですが、女性も活躍中です!

 

どんな時にやりがいを感じますか?

S.T.:
ひとつの現場ができあがる度にやりがいを感じます。図面やパースを見て、完成した姿を想像しながら進めるんですけど、工事が始まると見る見るうちにかたちになっていくんですよね。

壁を立てる工事など1日でものすごいスピードで進むものもあり、毎日完成に近づいているのが実感できるし、壁紙を貼って、ガラスをはめて‥とイメージしていたものが立体になっていくと(やったー!)と思います。ひとつひとつのプロジェクトごとに達成感が味わえます。

H.W.:
僕も同じです。図面という二次元だったのものが、ダイナミックに出現していくのが楽しいです。オフィス、カフェ、レストラン、映画館、ホテルなどいろんなジャンルの空間づくりに携われますし、それぞれ目的や意向が違うので、デザインの意図を汲みながら制作していくことにはやりがいがあります。自分が担当した施設がオープンして、実際にお客さまが入っている様子を見るのが好きです。

S.T.:
それはありますよね。わたしは最近オフィスを担当することが多かったのですが、オフィスだと完成後に気軽に見に行くのは難しいので、商業施設とか飲食店とか、お客さんがそこに入って過ごしている姿を見られるプロジェクトもやってみたいです。

 

大変なこともあると思うのですが、どんな工夫をしていますか?

S.T.:
一番バタバタしてしまうのは、現場が重なるときですね。基本は1人1プロジェクトなんですけど、進行中の現場を見ながら、次の現場の用意を進めることもあります。並行してプロジェクトを担当すると、1日に50本くらい電話がかかってくることも珍しくありません。

あとは、工事現場には協力会社の方も含めて男性が多いので、女性が働く環境の改善も提案していきたいなと思います。

H.W.:
大型商業施設など、現場によってルールが決まっている場合は、集合時間が早朝になることもあります。逆に営業時間に差し支えないように、夜間工事が必要なこともあります。オープンに合わせて工期も決められているので、調整が必要です。

あと僕の場合は入社6年目ですが、何十年もキャリアのあるベテランの協力会社の方など、さまざまな方と一緒にひとつの空間をつくりあげるので、現場のムードづくりも大切にしています。みんなで気持ちよく現場を進めたいので。

S.T.:
現場でのコミュニケーションはほんとうに大事ですよね。特にミスが発生したときに、人間関係が築けていると速やかにフォローをしあえます。

入社4年目のわたしより協力会社の皆さんのほうが知識も経験も豊富なことが多いので、わからないときは素直に聞いて、教えてもらって、提案してもらって、相談して、判断して、という連携がとても大切です。

ミーティング中の様子

 

特に印象に残っている仕事を教えてください

S.T.:
都内にあるクルマのショールームです。入社2年目の現場だったのでわからないことも多く、当時は上司に細やかに指導してもらいながら進めていましたが、その後、補修などでその施設に行くと、天井にはパネルがたくさん組み合わさっていて、ライトが通っていて、1mmのズレもないような、かなり繊細で高度な仕上げがされているのが、いまだからこそわかるようになって、(もう1回やったらもっと役に立てるのに!)という感じで印象に残っています。

 

施工管理職は、デザインと技術をつなぐ仕事とも捉えられますが、そのようなエピソードはありますか?

S.T.:
クライアントやデザイナーの想いが込められたデザインをより良く具現化するために、施工の面から新たな案を提示することがあります。施工管理者だからこそ理解している技術の知識をもとに提案したり、予算の相談ができるとまた別のプランを提示できたり、施工管理者としての新たな視点を加えてお伝えできることがあります。

H.W.:
そうですね。デザインと施工、それぞれが大切にしていることもあるので、せめぎ合いが起きることもあります。クライアントの希望に沿った空間づくりを通して、かかわったみんなが満足できるように考え、調整を重ねるのは施工管理者の腕の見せ所です。

まさにいま担当しているプロジェクトでも、当初決まっていた取り付けの方法があったのですが、それだと取り付け部分が見えてしまう。そこでさらに良くするために、他の方法を提案したら採用になりました。

居心地のよい空間をつくるには「これさえやればOK」ということはなくて、デザインに込められた想いを汲んで、ディテールを積み重ねていくことではじめて実現できるので、みんなで協力してそこに向かえるように道筋を示していくというのは施工管理職の醍醐味です。

丹青TDCの施工実績
株式会社丹青社 本社オフィス (上)クリエイティブミーツ、(下)執務エリア
(写真提供:丹青社 撮影:株式会社ナカサアンドパートナーズ)

 

「いい施工管理者」とは、どのような人だと思いますか?

S.T.:
クライアントの視点に立って物事を考えられる人かなと思います。私自身、自分がクライアントの立場で、仕上がりを目にしたときに素直に喜べるかということを一番大事にしています。

当然ですが、事業として収益を上げることも必要です。限られた時間と守るべき収益、そしてデザインの具現化に対するこだわりのバランスを見極められるのがいい施工管理者かなと思います。

H.W.:
施工管理者として、自分たちが行かないとプロジェクトが動かない。その意識を強く持っていて、責任感があることは基本です。

あとは空間づくりの仕組みをよく知っていること。自分が正しい知識を持っていない限り、的確な指示を出すことは不可能です。協力会社の方への依頼の仕方ひとつとっても、ただ図面を渡すだけではなくて、要点を追記するなどわかりやすい資料を提示するように心がけています。正しいことをわかりやすく伝えることはスムーズな現場づくりにつながり、自分のためにもなります。

 

この業界・分野はどんな人に向いていると思いますか?

S.T.:
自分の裁量では決められない作業時間があって、例えば日中利用されている建物の一部を工事するときは、周りの店舗に音や匂いの影響が出ないように、夜間工事が発生します。一方、協力会社の方々と連絡を取り合うのは日中がメインなので、自分の体調や気持ちを管理できることは重要です。

コミュニケーションを取れるのも大事です。電話も多いですし、現場は何十人もの方が集まりますし、1日中喋っているようなこともあります(笑)。

でも一番はものづくりが好きな人ですね。何かができていく過程にワクワクしたり、最終的な仕上がりを目にしたときに「やった!」と思える人だと思います。

H.W.:
僕もものづくりが好きな人だと思います。棚でもベンチでもなんでも簡単なものでいいので、「こんな感じの作ってみたいなー」というものを考えて、材料はどれだ?どういう手順?ニス塗る?とかやってみて、組み上がっていくプロセスを楽しめるような人が向いてると思います。

この間、親友の結婚祝いにテーブルを作ってプレゼントしたんですけど、自分が作ったものを誰かが使ってくれるというのはうれしいですよね。

親友の結婚祝いにプレゼントするために、ご自身で製作中のテーブル!ペインティングして完成です

 

これから進路選択をする中高生にアドバイスをお願いします。

S.T.:
わたしは就職活動のとき、職業の情報をそんなにたくさん集めなかったんです。でもいまは新たな職種も増え続けているし、見たことも聞いたこともないものがたくさんあると思います。だからまずは自分の興味のあることのまわりに一体どんな仕事があるのか、調べておくと良いですね。

例えばインテリアが好きだとしたら、インテリアデザイナー、インテリアコーディネーター、建築士、空間デザイナー、カラーコーディネーター、家具職人、照明デザイナー、CADオペレーター、インテリアショップ店員‥とか何十種類もあるし、それはどんなジャンルでも同じだと思う。知識が広がれば、選択肢も増えます。

H.W.:
挨拶をきちんとする。時間や期限、約束を守る。無理なことは正直に言う。体調を管理する。そういう当たり前のことは、意外と学生のときは意識していなかったんですけど、どんな道に進むにしても大切だと実感しています。

あとはもし施工管理職に興味があれば、実際にいろんな空間を見るのはいいと思います。

歴史があって素晴らしい空間も、新しくて流行りの空間も、画像で見るだけではその魅力を体感するのは難しい。その空間が何を大切に作られているか、何にスポットが当てられているかはひとつひとつ違うので、もし中高生のみなさんが意識できるようになったら、将来はものすごく面白い仕事ができると思います。

 

取材を終えて

今回の訪問はグループ会社の一つである株式会社丹青TDC。

ディスプレイ業界の大きな課題として、20代、30代の管理者不足が挙げられます。今の20代の管理者はどのような考えで仕事に就いているのか。今後の業界のためのヒントを探りに伺いました。

いざ、2人の制作管理者にお会いしてみて、「頼もしい」という表現が合うものでした。

お二人とも、気負う感じでもなく、空間づくりに真剣に向き合っている。2年目くらいには、続けていくことに迷い悩んだと。(そう、誰しもそういったトキがありますよね)

そこを乗り越えて、成長し、一人で任されたり、後輩の面倒を見るようになり、責任と空間づくりの面白さの真っ只中にいるようでした。

丹青TDCの先輩たちから後輩へ、きっと大切な仕事の作法が受け継がれているんだと思います。

これから、業界は働き方や技術の進化などもあり変わっていくと考えられます。未来をしなやかに切り開いていく活力をお二人から感じました。今後の活躍が楽しみです。

PS

懐かしいオブジェ、丹青社の創業者の作品に遭遇。

「手」はものづくり欠かせない。手の様々な表情を創業者は大事にしていたと聞いています。


株式会社丹青ヒューマネット

石畑 和恵

 

 

株式会社丹青ヒューマネットは、「働く人を応援し、幸せになる」をミッションとし、建築・インテイリア業界へ人材を輩出しています。人材のことで課題をお持ちの企業様、新しい働き方をお探しの方はこちらへご連絡ください。


 

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