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「前橋のまちづくり」が「働き手の未来」にもたらす価値 ── 前橋現場研修レポート&インタビュー

文・取材:市根井直規 写真:Yasumin 取材・編集:丹青ヒューマネット
公開日:2023/7/11

丹青ヒューマネットが新入社員向けに実施した、前橋での現場研修。近年注目されている前橋のまちづくり、その最先端の建設現場で、新入社員たちはどんなことを学んだのか。

本記事では、5月26日に行われた前橋研修報告会レポート、そしてこの研修が企画された背景や目的についてのインタビューをお届けする。

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研修報告会で新入社員が使ったスライド。前橋のまちづくりについても紹介。

そもそも、この研修はどんな目的を据えて実施されたものなのか。その背景には、制作管理職の担い手不足がある。

業界内人材派遣・人材紹介を主たる事業としている丹青ヒューマネットにとって、生産年齢人口減少の影響は無視できない。若者の母数が減っている以上、優秀な人材を確保するためには「量」ではなく「質」へアプローチせざるを得ない社会になりつつある。

そこで新入社員教育の見直しをはかる中、見えてきたのは「職業としての魅力を伝えること」「実学中心のプログラムにすること」だった。そこで、近年まちづくりにおいて勢いのある群馬県前橋市の企業と連携し、「前橋のまちづくり」の中で施工管理者として従事させるOJTスタイルの研修が実施されることになったのだ。

このような想いの中で行われた本研修。これが、業界や人、そしてまちにどんな価値をもたらすことになったのかについて考えてみたい。

「社会人想像力」とも言えるスキル

まずはなんと言っても、新入社員たちがどのようなものを獲得したのかについて考える必要がある。以下に、報告会および実施後のインタビューから抽出された要素をまとめた。

社会人としての力

・体調管理が大事
・「報連相」の大切さを実感した
・チームでの活動に慣れることができた
・自身の「気の緩み」に気づくことができた
・「自分で判断すること」と「勝手に動くこと」は違うことを知った
・仕事をしている実感、責任感、緊張感を感じるようになった
・これから働く職場と異なる領域を見る機会になった

人間としての成長

・小さな疑問を無視しないことが大事
・内面の成長が大事
・頼られること、頼ることが大事
・現場は厳しい人ばかりだと思っていたが、そうではなかった

野望

・周囲に影響を与えられるような人間になりたい

もっとも多く話されたのは「社会人としての力がついた」といった旨の内容で、特に「報連相」の重要性については繰り返し語られていた。「報連相を怠るとイレギュラーな事態が発生し、かえって連絡事項が増えてお互いの負担になる」という言葉もあり、これは実際に「報告したほうがよいことを自分で解決して報告しないでいた結果、心配されてしまった」といった場面に直面することによって実感を得たように見えた。

また、「体調管理」「気の緩み」に関する意見も多くみられた。社会のメンバーとして仕事をする上では、個人ではなくチーム全体を意識しなければならず、プロジェクトを円滑に進めるためには「自分を自分で管理する」ことが必須となる。

「これから働く職場と異なる領域を見る機会になった」、これは研修後に「内装」の現場で施工管理者として働く予定の新入社員が、前橋の「建築」の現場を体験したことによって発言されたものだ。これから実際に職場へ配属されると、配属先と異なる現場の仕事の様子を見る機会はなかなかないため、貴重な経験であると感じたようであった。

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研修中に貴重な経験を積めたことが分かるスライド。

続いて、もう少しスキルを抽象的にみる語りも多かった。「小さな疑問を無視しない」「頼られること、頼ること」などは、業務の外側、広く社会生活においても重要であるという文脈で話されていた。また特に共感を得ていたように見えたのは、「現場は厳しい人ばかりだと思っていたが、そうではなかった」という発言だ。実際に現場で働いている職人や施工管理者などと直接コミュニケーションを取ることで、思い込みを払拭できていたようだった。

これらの要素をあえて一言でまとめてみるなら、新入社員たちにとって、さまざまな「想像力」(「社会人想像力」と言えるかもしれない)を養う研修であったと考察できる。現場での実学を通した技術的な学びも得られただけでなく、「社会で大切とされていることが、どうして大切なのか」を想像する機会となり、今までは頭の中にしかなかった「組織の中で働く」という営みについて、身体的に実感していたように見えた。

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「人生の先輩」たちが、ほんとうに伝えたかったこと

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今回の研修は、いわば社会人としての「一歩目の階段」だ。初めて出会う色々なことが目の前で起こっていく中、その階段をひとつひとつ自分の足で上っていかなければならなくなる。そんな新入社員たちのチャレンジを目の前に、協力者である「研修の受け入れ企業側」はどんなことを考えていたのだろうか。

新入社員たちを受け入れたのは、宮下工業株式会社、小林工業株式会社の2社。報告会が終わったあと、宮下潤専務取締役、小林久峻常務取締役のそれぞれにお話を伺った。

─ 研修が終わった今、どんなことをお考えですか?

宮下潤氏(以下、宮下):
受け入れ側の会社として、私たちは大丈夫だったかな?と思っていました。ありのままの仕事をドタバタと見ていただいた形で、現場が忙しい時には現場に集中してしまっていましたし。でも、さっきの皆さんの報告を聞くと、ちゃんと学び取ってくれていたのかなと思いました。

小林久峻氏(以下、小林):
『丹青ヒューマネットが思い描いている研修』と『我々が可能な研修』が違ったらどうしよう、と不安でしたが、発表を見て安心しました。目の色が変わったな、と思います。現場研修の中で、やりがいを感じてくれていたのは嬉しいですね。

─ 通常の業務もある中、この研修の実施に踏み切ることができたのは、何があったからでしょうか?

小林:
教育の体制づくりを進める中で、丹青ヒューマネットの人材への考え方から学んでみたい、と考えたからですね。建設業に関わる若者が増え、前橋というまちのことも好きになってもらえるなら、ぜひやりたいと思いました。
確かにスケジュール調整等かなり大変ではありましたが、今日の皆さんの言葉と表情から、それ以上のものを受け取ることができました。

宮下:
今、前橋って非常に面白くなってきているんです。地元の学校の子どもたちも見に来る機会が増えましたし、県外からも見学者が来るようになりました。今まで、こんなことはありませんでした。自分たちのまちで自分たちの仕事を見てもらえるのであれば、それだけで誇らしいことだと思いました。

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─ 実施において、特にこだわって準備した点はどんなことですか?

小林:
実は、現場チームとしては『安全面を考慮すると、なるべく現場に入れたくない』という懸念があり、我々としては『なるべく色々な経験をしてほしい』という気持ちがあり(笑) そのせめぎ合いの中で、適切に学んでいただける方法を綿密に打ち合わせました。

宮下:
せっかくなので多くの現場を見られる機会を設けて、各現場の担当とコミュニケーションできるよう準備しました。また小林さんと同じく、どこまで踏み込んで見ていただくかは大変悩みましたね。

─ 受け入れ側として、メリットを感じたポイントはありますか?

宮下:
単純に、東京の会社の若い人たちが我々の仕事に興味を持って、真剣に取り組んでくださったのはありがたいですよね。弊社の社員たちにとっても初めてのことで、最初はどうしていいか分からない様子でしたが、自分たちの仕事が下の世代に影響していく実感から、あらためて仕事を客観的に見られたのではないかと思います。

小林:
弊社も教育に力を入れているところなので、こちらとしても非常に参考になりました。建設業って、どうしても『背中を見て覚えなさい』という風潮があるんですが、やはり教えるべきところは教えなければいけないんですよね。
また、やる気に満ちた皆さんの姿を見て、似た世代の若手が刺激をもらっていたようで、『僕も負けていられないです』なんて言葉も出ていました。

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─ 想定通りに行かなかった点があれば、教えてください

小林:
なるべく多様な現場を見てもらおうと考えたのですが、その段取りを組むのが大変でしたね。現場ごとにも特徴がありますし。もう少し効率よくスケジュールが組めたのではないかという反省はありますね。

宮下:
もう少し若手同士で交流していただくことを思い描いていたのですが、現場の広さの関係もあり、その機会があまり持てなかったのは勿体なかったなと思います。また、お預かりしている方々に気を向けすぎて、弊社の社員たちをフォローする余裕が作れなかったことも反省点です。

─ 今回の研修を通して、ご自身の経験から思い出されたことはありますか?

宮下:
誰もが最初は失敗ばかりで、たくさん怒られます。仕事は、それらを乗り越えて自然に覚えていくものです。私は過去、上司に『場数を増やせ』と言われたことがあります。これは場の数であり、バカの数でもあると。大きな失敗を防ぐために、小さな失敗を乗り越える経験が必要なんだと思っています。


小林:
何度も言われていることですが、報連相は本当に大事です。特に忘れてはいけないのが、完了報告だけでなく『開始』と『中間』の報告もすること。
以前勤めていた会社で、上司に『あの件、どうなった?』と聞かれ、『これからやろうと思ってました』と言ったらすごく怒られてしまって(笑) うまく仕事をしている人は、自然に報連相ができているんですよね。
『この日にやる予定です』、『ここまでやりました』。そうすると、結果的に定時に帰れるわけです。やりすぎるくらいがいいと思います。

─ 最後に、新入社員たちにエールをいただきたいと思います

宮下:
皆さんが目を輝かせて話をしていたのが印象的で、自分にもそんな時期があったことを思い出しました。これから大変なことがたくさんあると思いますが、わくわくする気持ちを持ち続けながら、向上心を持って取り組んでほしいと思います。

小林:
建設業って、『つくって終わり』ではないんですよね。自分が作ったもの、携わったものが何十年と残り続けて、まちの一部となっていきます。そんなやりがいのある仕事だと思っています。多くの物件に携わって、多くの人々の思い出となる場所を作ってください。

このプロジェクトは、我が社のチャレンジでもある。そんな熱意を感じるお二人のインタビューからは、既存の仕組みや空気を問う、人生の先輩としての責任感が伝わってきた。

 

「働き手」「会社」「まち」の、ハッピーな関係

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今回の研修をコーディネートする形で伴走した前橋市役所にぎわい商業課の田中隆太氏にもお話を伺った。

─ 研修を振り返って、いかがでしょうか?

田中隆太氏(以下、田中):
今回は研修という形で3週間滞在していただきましたが、知らないまちに仕事で行くような経験は、これから先もたくさんあるのだろうと思います。
当然、仕事を全うすることは必須ですが、自身のモチベーションを保つためには『仕事以外の時間の使い方』も大切です。そこにどんな風土があるのかを知り、楽しみつつ過ごすことも、健康な精神を養うためには必要だと思っています。

─ この取り組みが前橋というまちにポジティブな影響を与えたと感じますか?

田中:
今の前橋には、よい動きが生まれており、東京だけでなく、全国さまざまな土地から前橋を目掛けて人が訪れています。実際、新入社員の皆さんも『前橋っていいな』とつぶやきながらまち歩きをして、前橋を引っ張っている『人』との出会いも楽しんでいたように見えました。
前橋にいる自分たちが面白いと感じているものを皆さんにも面白いと思ってもらえて、この感覚が間違いじゃなかったんだなと思いました。

まちの良さを体感すること、これはまさに座学では学べない領域のひとつだ。長い人生を歩む上で大切な、「仕事」の枠を超えた「生き方」を、まちで学ぶ。

そしてまちは、新しい風が吹き込むことによって姿を変え、さらにポテンシャルを高める。このWIN-WINな循環の第一歩として、この研修が機能していたのではないだろうか。

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前橋市の新しいシンボルとして平成30年に誕生した「太陽の鐘」

「働き手」「会社」「まち」、これらが三方良しであること。文字にするとシンプルだが、簡単には実現できない課題だ。ここに立ち向かうべく、各々の役割で新たな一手を描き続ける人々の姿勢は、新入社員たちにどんな影響を与えたのだろうか。その答えは、それぞれのまちに羽ばたいていった若者たち自らの仕事ぶりによって描かれていくことだろう。

 

前橋での研修を終えて

人が育つ会社をつくる。これは私をはじめ丹青ヒューマネットの重要な課題であり、新入社員研修もその一つです。人口減少、働く人不足が実際に起きている中、施工管理職も将来危うい状況と認識しています。

そんな中、2か月間で施工管理者として社会人として送り出す側として『予定調和のない、待った無しの環境』をいかに作り出すかが課題でした。1年かけて、前橋の皆さんのご理解、ご協力を得ながら『前橋研修』が実行できました。前橋市役所の田中さん、宮下工業、小林工業の皆さまには感謝しかありません。この場を借りて御礼を申し上げたいと思います。

実際の研修は3週間を前橋で行いました。2つのチームに編成し、現場見学、施工管理者の方々からお話を聞いたり、また時には役割を与えていただきそのミッションを完遂することなど実地も織り交ぜながらの研修でした。

初日からハプニングが起き、それぞれの立場で考えることも沢山ありました。関わる人が増えてきたことで報告、連絡、相談することがいかに重要なことか、仕事に取り組むということはどういったことなのか理解することができたと思います。

このコラムが出たころには、それぞれの持ち場で元気に仕事していることと思います。ここから先は自ら切り開いて道を作って欲しいと願うこと、帰る場所に前橋という場所が出来たことは忘れないで成長して欲しいと思います。7人へエールを送ります。


株式会社丹青ヒューマネット

石畑 和恵

 

株式会社丹青ヒューマネットは、「働く人を応援し、幸せになる」をミッションとし、建築・インテイリア業界へ人材を輩出しています。人材のことで課題をお持ちの企業様、新しい働き方をお探しの方はこちらへご連絡ください。


 

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