プロ意識が芽生えるショールーム見学/10代のみんなへ伝えたい、空間づくりの仕事 Vol.13
文・編集・取材:丹青ヒューマネット
公開日:2023/5/31
10代のみんなへ伝えたい、空間づくりの仕事
新入社員に知って欲しい~既製品金物~
丹青ヒューマネットは2023年4月に7名の新入社員を迎えました。入社式を経て、新入社員たちが施工管理職として現場で活躍するために、2ヶ月間の研修プログラムを実施中です。
現場で使うものがどのような過程で作られているのかを実際に見て、知識を増やすことを目的として、工場見学やショールーム見学を研修プログラムに取り入れています。本記事では、スガツネ工業株式会社のショールーム見学の様子をお伝えしていきます。
空間づくりに欠かせない金物
空間づくりには、オーダーで作るものと既製品で作るものなどが混在します。それらを作るために多くの金物が使われています。棚、家具・什器、扉など実用性・機能性を保つために使用されているもののほか、取手・ハンドルなど意匠に関わるもの、そして産業用として工作機器や医療・分析機器などがあり、空間を作り上げるために、金物は必要不可欠なアイテムといえるでしょう。
ショールーム見学のスタートは、取り扱い製品や既製品金物の歴史を知るところから
現場の色々な箇所で使われている金物は、見えているところだけに使われているのではなく、見えないところにも多くの金物が使われています。
スガツネ工業の主力製品の“3本柱”は、私たちが現場においてよく使用する「丁番」「棚柱」「スライドレール」です。空間づくりに欠かせないアイテムであることを新入社員は初めて知り、これらがあってこそはじめて、店舗や家などの空間の扉、棚、引き出しを動かしたり、支えたりすることが可能になることを学びました。
実物に触れることが、さらなる理解につながる
いよいよショールーム見学がスタート!新入社員はプロトタイプの引き出しや扉を動かし、入社してからこれまでの講義形式の研修で学んだ用語の実物に初めて触れ、知識がつながるおもしろさを感じているようでした。 話を聞く新入社員の姿勢が、どんどん積極的に変化していったのも印象に残っています。
3本柱の1つめは丁番
丁番は扉や蓋を開閉させる部品で、一般的に家具や店舗什器の開き戸に使われているのはスライド丁番と呼ばれているものです。 特に「オリンピア」シリーズは扉をゆっくりと引き込むことができるダンパーが内蔵されているため、扉を枠内に取り付けた後で扉の閉まる速度を5段階で調節することが可能です。
3本柱の2つめは棚柱
棚柱は店舗などの陳列棚によく使われ、金属製の柱に棚受を固定するための穴が開いたもののことです。クローゼット内部やキャビネットなどに可動棚を設置する際にも使用します。
棚受の金具部分を棚柱の穴に引っかけるときに“ガチャ”という音がすることから「ガチャ柱」とも呼ばれます。収納する物によって、棚板の位置を簡単に変更できるので、商品陳列のレイアウト変更なども短時間で行うことができます。
3本柱の3つめはスライドレール
引き出しに取り付けられていて、開閉をスムーズにしているのがスライドレールです。 引き出し側面に取り付けるスライドレールが最も普及していますが、引き出しの底板に取り付けるタイプもあります。
また、前板を押すことで引き出しが開くもの(プッシュオープンタイプ)や、ゆっくりと閉まるもの(ソフトクローズタイプ)など、さまざまな種類の動きや機能を持ったスライドレールがあるため、お客様のニーズに合わせた製品を選ぶことができます。
スライドレールの選定をする際には、コストや交換などの手間を考慮する必要があります。製品の特徴を理解し、お客様の用途やニーズに合わせて、適切なスライドレールを選択することが大切です。引き出しに入れる内容物の重量によっては、什器用ではなく、工業用のスライドレールから選ぶこともあります。
> こちらの製品の詳細ページ(品番:RUN-PS2)
理想の動きを実現するスガツネ工業の技術力“モーション デザインテック”
スガツネ工業では、扉や蓋の操作性を向上させる機構の開発も行っています。 ゆっくり動く“ソフトモーション”や、どこでも止まる“フリーストップモーション”など5つの動きの種類があります。使用する現場に合わせて適切な選択をすることで、操作性を高めることができます。
3万点を超える製品の中にはこんな製品もあります
さまざまな用途に適した3万5000点以上の製品を取り扱っているため、3本柱の製品以外でも空間づくりに使われる金物は多くあります。
> こちらの製品の詳細ページ(品番:EBブラケット)
> こちらの製品の詳細ページ(品番:PUK3-15W)
右上:壁収納ベッドもスガツネ工業の製品の一つです
左下:日本の職人さんの技が光るタオル掛け。最高級のステンレスSUS316を使用し、鏡面仕上げとサテン仕上げが共存したZweiLシリーズ
> こちらの製品の詳細ページ(ZweiLシリーズ)
右下:最後に説明いただいたのは、ガラスの開き戸・開き扉に使用する“ガラス丁番”。
家具の扉や店舗のショーケース、建具のガラスドアなどに使用されています。
> こちらの製品の詳細ページ(品番:MFH-300)
情報をどのように利用するのかがポイント
スガツネ工業の製品カタログはとても分厚く、しかも4冊で1セットです。ホームページにはそれらすべての製品情報が載っていて、詳細図のほかに、選定ツールやシミュレーションツールも用意されています。
施工管理職の仕事をするときには、これらを活用することが重要です。また、分からないときには、スガツネ工業の担当者に相談して、お客様にとってベストな選択をしましょう。
企業の栄える道は人の利便を計ることである
今回、ショールーム見学でお世話になったスガツネ工業株式会社で家具金物や建具金物、ガラス金物などを扱うアーキテリア事業部の大羽博さん、内海清公さんにスガツネ工業の強みやこだわりについてお話しいただきました。
——スガツネ工業についてお聞かせください
今年で創業93年を迎える当社には、大切にしている社是があります。それは、「企業の栄える道は人の利便を計ることである」という言葉で、顧客の声を聞いて、製品に活かすというものです。
スガツネ工業は自社工場を持っているからこその物づくりの側面と、ヨーロッパを中心に欲しい海外製品を供給できる商社としての機能を兼ね備えていて、全部で扱う製品は3万5000点あります。それらは既製品として自社倉庫に保管しているので、欲しい分だけすぐにお客様の手元へ届けることを可能にしています。
——スガツネ工業の強みや、こだわりを教えてください
自社での開発設計に力を入れていて、ワンストッププロデュースを実践しています。私たちは実用性や機能性を重視しながら、デザインにも力を注いでいます。その結果、魅力的で高品質な日本製のオリジナル製品を生み出しています。
また、品質管理にもこだわり、徹底的に品質試験を行っているので、壊れにくい製品を提供することができます。技術力も強みのひとつで、特に当社独自の技術である「モーションデザインテック」は動きを創造するテクノロジーです。
この技術力を駆使して、理想の動きを実現させた製品を提供することを実現させています。 私たちはこれらの強みやこだわりを大切にし、お客様に最高品質の製品とサービスを提供していくことを目指しています。
——丹青社グループの仕事を通して
丹青社のデザイナーの方や、施工管理の方からさまざまなオーダーをいただいています。3本柱の製品はもちろんのこと、グレードの高い既製品金物の要望もあります。
納品された場所へ少し経ってから足を運ぶと、改めてうれしく感じます。最近では家具用LED照明の問い合わせも増えてきており、自信を持ってご紹介できる商材ですので、輸入するアイテム数を多くしました。
これからも、スガツネ工業の製品がさまざまな空間で利用してもらえるよう、基礎知識の勉強会や新製品の紹介など行っていきたいと考えています。
見学を通しての気づき
見学を終えた新入社員からは、「スライドレールを底に付けることで見た目はすっきりするが、その分だけ収納の高さが減ってしまうので、使う場所を選ぶことが分かりました。」や、「ドア枠と丁番が表側からは隠れていて見えないドアが展示されていて、壁と一体化していて収まりがかっこ良かったです。お客様が重視することを汲み取って、デザインを重視する場合にはこういった製品を選びたいと思いました。」、「モーション デザインテックの製品を体験して、機構部分の工夫次第によってさまざまな動きができることを学びました。また、子どもが使用することが多い商業施設のトイレなどでは、ソフトクローズの扉を採用したほうが安全であると感じました。」という感想が届いています。
そして、「学校で学んだから、知っていると思っていたが、現場で仕事をするためには、よりたくさんのことを知る必要があることが分かった。」、「空間づくりに使う材料を知ることが楽しい。もっと知りたいと思った。」という気づきもあったようです。
これらの気づきは現場で制作管理職として働く上で必要なことですので、私たちはとてもうれしく思っています。
ショールーム見学を終えて
スガツネ工業ショールーム見学は、既製品金物が暮らしの中に当たり前に使われていることを再認識するとともに、内装の空間づくりに欠かせない重要な製品であることを学ぶことができました。
特に新入社員にとっては、学生時代に学んでいた知識が浅かったと気づく機会にもなったようです。今回のショールーム見学は、1人1人のプロとしての興味の持ち方、製品の見方に変化が起きたように思います。
目で見て、動かして理解を深める、自分たちの成長につながる貴重な経験となったように思います。今日は入口、プロとしてこれから仕事に活かし、より一層の成長を目指してもらいたいです。
株式会社丹青ヒューマネット
石畑 和恵
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