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施工管理の仕事を知る、リアルとオンラインとのハイブリッド出前授業/10代のみんなへ伝えたい、空間づくりの仕事 Vol.12


出前授業が終わった後で、学生たちと記念撮影

文:吉岡奈穂 編集・取材:丹青ヒューマネット
公開日:2022/12/8

 10代のみんなへ伝えたい、空間づくりの仕事 

学校の教室と実際の施工現場をオンラインでつないで行った、丹青ヒューマネットの出前授業。

今回参加されたのは、インテリアの専門学校であるICSカレッジオブアーツのインテリアマイスター科1年生。デザインから施工までを横断的に学ぶことで、多能工としてインテリア施工のすべてを一人で担える人材を養成するコースのみなさんです。

施工管理者の仕事内容についてご紹介することは、近い将来何らかのかたちで空間づくりに携わるみなさんのお役に立てるのではないか。そんな想いから授業の1コマをいただき開催する運びとなりました。

本コラムでは当日行ったプログラムの内容や学生の様子、感想などをリポートします。

<ICSカレッジオブアーツ>

-- SCHOOL PROFILE


1963年創立、日本で最初にインテリアデザインの教育を始めたインテリア教育のパイオニア。
インテリア、建築、家具のデザイン、ものづくりを学ぶことができる専門学校であり、第一線で活躍するデザイナーの個別指導が受けられることや、企業とコラボレーションした授業があること、工房が充実していることなどの特徴を持つ。
卒業生はインテリア業界に多く就業し、常に業界の第一線で活躍し続けている。

ものづくりが好きな学生たちに、施工管理職について伝える機会を。

安全性や情報セキュリティなどの面から、実際の仕事を学生が体験する機会を設けるのが難しい施工管理という仕事。ICSカレッジオブアーツとしては、学生が理解を深める方法を探していたそうです。

そこで空間づくりの分野をメインに人材派遣を行うわたしたち丹青ヒューマネットは、親会社である丹青社や施工中の現場のみなさんにもご協力いただき、リアルとオンラインのハイブリッド出前授業として実現させました。

開催したのは2022年9月。授業はまずディスプレイ業についての説明からスタートしました。ディスプレイ業とは、総合的な情報サービスの一環として、快適な空間・環境を創造する総合ビジネスのこと(出典: 一般社団法人 日本ディスプレイ業団体連合会)。丹青社が手がけたさまざまな事例を紹介したところ、みなさんが知っている施設も多く、仕事の内容をより身近に感じてもらうことができました。

そしてわたしたち丹青ヒューマネットの事業は、空間づくりのプロフェッショナルとして活躍する人材をデザイン・内装ディスプレイ・建築業界へ輩出することです。空間づくりに関わる仲間を増やしたい。空間づくりを通して働きがいも創出したい。そんな想いをお伝えしました。

 

いま、学生のみなさんが目指す職業は?

次に、学生のみなさんと目指している職業とその理由について、ディスカッションを行いました。家具職人を挙げたのが6名。小学生のときに椅子を作って楽しかったという体験や、実家の家具工房を継ぎたいという意志、いい家具を通して暮らしを豊かにしたいという夢を話してくれた学生もいました。左官職人を挙げた1名は、ひとつのことを極めて独立したいからとのことです。

まだ進路について迷っているという学生も2名いました。「家具職人か建築家かインテリアデザイナーか考え中です。夢は世界で一番くつろげる空間をつくることなので、いろんな職業を体験して叶えられたらと思っています」。

大学を卒業してから入学したという学生は、「多能工、内装大工、植物関係の仕事といろいろ検討しています。好きな建築家がいて、自分も何らかの作り手として建築に関わっていきたいので幅広く勉強中です」と答えてくれました。

今回のテーマである施工管理職を挙げた学生はおらず、職種そのものの知名度の低さからも業務内容をはじめ仕事のやりがいなどをイメージするのも難しいことを感じました。

一人ずつ目指している職業について話してもらい、ディスカッションを行いました。

 

本日の現場について学ぼう、見てみよう。

ここからは施工中の現場にいる丹青ヒューマネットの児玉にバトンタッチ。実際の工程表、仕上表、図面、パースを使いながら、本日オンラインで中継する現場「エニタイムフィットネス」についてのレクチャーが始まります。

「エニタイムフィットネス」は、日本初の24時間営業を実現したフィットネスジムで、2010年に国内1店舗目を開業してから、2022年には1000店舗を突破。
デザインマニュアルがあり基本的な空間の設計はほぼ共通であるものの、店舗はそれぞれ広さや形状がすべて異なるほか、日焼けマシンや水素水サーバー、プロテインサーバーなどの設備や仕様を備えた店舗もあり、施工管理職はさまざまなことに注意を払う必要があります。

「施工会社はその現場を担当することが決まると、詳しい図面を描いて準備を進めていきます。施工管理職の業務は近隣への挨拶から、仮設計画、道路使用許可申請、工程表作成、制作物の発注、制作物の納期確認…など多岐に渡りますが、業界では『段取り八分』という言葉があるんですね。これは段取りさえしっかりできていれば、仕事の80%は終わったようなものだという意味で使われます。
毎日滞りなく仕事を進めるには、前日もしくはもっと前から、材料を手配したり足場を用意したりということがとても大切なんです」。

現場からの中継を担当した児玉。丹青社で施工管理職として30年間従事した後、2022年より丹青ヒューマネットで営業部長として業務を逐行している。

画面に映される資料に対して、学生からは「業界ではVectorWorksから3D CADに移行しているんでしょうか?」というソフトウェアについての質問が出ました。まさにいま、丹青社グループでもBIM(Building Information Modeling)ツールのひとつであるRevitというソフトウェアへの移行が進められています。

Revitとはコンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加することで建築物のデータベースを活用できるようになるソフトウェアです。設計から施工、維持管理までのあらゆる工程で情報を活用できるため、施工管理職でもOJTが行われています。

そして学生のみなさんが一番楽しみにしていた施工中の現場の生中継です。ジムのマシンエリアの床の下地を張っているところ、業務用の接着剤、きれいに積まれている床の仕上げ材など、実際のものを見せながらの説明に、普段なかなか知ることのできない現場の様子がよくわかります。

壁の塗装もまだ途中段階。発注した素材が届くまで作業が中断している箇所や、更衣室の壁に収納を付けているところなど、臨場感あふれる施工のプロセスが次々と映されました。

ブルーシートが敷いてあるところは、養生をしているとのこと。仕上がりを汚さないようにするために行っています。安全管理のためのポスターも貼ってあり、安全第一に作業を進めている現場の雰囲気も伝わってきます。初めて目にするもの、初めて耳にする専門的な言葉。現場からのリポートに興味津々の学生のみなさんの姿が印象的でした。

中継にて、階段吹き抜け部を紹介しているところ

続いて紹介するのは、床仕上げ材!

床の接着剤を塗布作業中(天井が仕上がっているため、ヘルメット未着用を許可しています)

 

施工管理者の生の声を聞いてみよう。

現場の様子を見たあとは、施工管理職として本現場を監督している丹青社の藤田さんに、児玉からインタビューを実施。図面上のものが少しずつ具現化されていくことに興味を持ち、施工管理職に就いたという藤田さんはチェーン展開している店舗空間を多く手掛ける“SE事業部”に所属し、現在キャリアは4年目です。

藤田さん(左)をインタビューする様子

「驚いたのは、職人さんの仕事が想像以上に細かく分かれていることです。この現場にも20分野ほどの職人さんに来ていただいていますし、思った以上にたくさんの方と関わる仕事でした。うれしいのは、引き渡しのときに事業主様に喜んでいただいたり、オープンした店舗にたくさんの方が来てくれたりする様子を見たときです。自分が携わった施設が世に出ていくのを見るとやりがいを感じます」。

もちろん大変なこともあると藤田さんは言います。「伝えたいことが意図通りに伝わっておらず、現場に影響が出てしまったときは落ち込みます。わたしがミスしても自分自身でリカバリーできる範囲は限られていて、結局は職人さんに手を動かしていただかなければならないので、丁寧なコミュニケーションを何よりも大切にしています」。

コミュニケーションが要というのは児玉も同感です。「年代の異なる、例えば自分の父親、あるいはそれ以上の年齢の職人のみなさんなどに指示を出すということに対して最初は苦手意識や違和感もあったんです。でも的確な指示出しは仕事の基本ですので、わかりやすい伝え方には常に気を配ってきました」。

床の段差部分の仕上げ方を職人さんに指示しているところ

学生からは、やりやすい現場とはどういうものですか?と質問が挙がりました。藤田さんの回答は、わからないことは聞いてくれる方がいること。事前に疑問や不明を解消してくれる方がいる現場はやはりスムーズだそうです。児玉は、自分が図面を描いた現場はより詳細を把握できるため進めやすかったと答えました。

「現場でトラブルなどはないんですか?」という質問も。図面通りに発注したものの、搬入ルートの幅員と製作物とのサイズが合わずに搬入が難しかったこと、造作の納め方についてデザイナーと施工管理者・工場側とで意見が分かれることなど、もちろん細かいことはたくさんあると藤田さんも児玉も経験したエピソードを交えて答えます。

デザインや意匠を大切にする設計と、安全性や強度、品質について責任を持つ制作とでは、それぞれの役割も違うので、さまざまな視点から相談を重ねながら、より良い空間づくりが行われます。

 

ハイブリッド出前授業を体験してみて。

予定していたプログラムが終わり、感想を聞いてみました。

阿部さんは「実際に現場を見たことで仕事内容のイメージが持つことができました。施工管理職は全体を見ながら現場をまとめていく役割だということがよくわかりました。魅力だと思ったのは、0からスタートした現場を最後の100の部分まで見届けられることです。これは施工管理職の特権だなと感じました」とのこと。

矢嶋さんは「実際に施工管理職の方から話を聞けたのは貴重な経験です。コミュニケーション力が業務の核というのは新しい発見でした。いわゆる接客業、サービス業というわけではないけれど、気遣いとか伝え方がほんとうに大事だと感じました。でもたくさんの職人さんたちの思いも含めて、自分が全部背負っているというのは、ものすごくやりがいがあると思います。関わった現場に対しての愛着も湧くと思いました」と答えてくれました。

こちらの2名の学生に感想をお聞きしました

インテリアマイスター科の蔣坤志(ショウ コンシ)先生からも締めくくりの言葉をいただきました。

「わたし自身も台湾で施工管理職として働いた経験があります。施工管理職といっても、設計からデザイン、施工管理までをすべて自分が担当するという働き方だったので少し異なりますが、日本ではより専門的な職業であることを感じました。施工管理職は実際に働いている姿を目にするのが難しいこともあり、リアリティを伝えにくいと思っていたところ、本日のプログラムを通して理解が進んだと思うので感謝しています」。

台湾で施工管理職のご経験をお持ちの蔣先生

学生へのアンケートには「段取り八分に共感しました。準備が大事ということは施工管理職に限らず、家具を作る上でも同じだと思います」という回答もありました。

将来みなさんが施工管理職ではない職業に就かれても、同じ空間づくりに携わる仲間として、本日の時間が少しでも役立つものになれば大変うれしく思います。ご協力、ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

 

出前授業を終えて

『現場を見せてあげたいんです』という先生の一言から始まったこの出前授業。このご時世、現場に多くの学生を連れていくのが難しい状況ではありましたが、わたしたちの想いも同じ、一人でも多くの学生の方へ、施工管理職の魅力を伝えたい。そのような目的を掲げ、準備をスタートしました。

実現のためには、丹青ヒューマネットだけでは乗り越えられない課題がたくさんありました。授業の実施にあたりご協力いただいた丹青社のSE事業部のみなさん、そして何よりエニタイムフィットネスを運営しているFast Fitness Japan(ファストフィットネスジャパン)様、東急レクリエーション様の深いご理解に感謝申し上げます。

わたしたちは、現場へ何度も足を運び、段取りを考え、資料を作り臨みました。当日は、WEBでつないだ現場を熱心に見る学生たちを目の前にして、準備をしてきた苦労も吹き飛びます。施工管理職の魅力も、大変なところも両方伝えました。これから進む、職人の道も、デザイナーになる道も施工管理の道も空間づくりという目的は一緒、自分らしい道を見つけてもらえると幸いです。


株式会社丹青ヒューマネット

石畑 和恵

 

株式会社丹青ヒューマネットは、「働く人を応援し、幸せになる」をミッションとし、建築・インテイリア業界へ人材を輩出しています。人材のことで課題をお持ちの企業様、新しい働き方をお探しの方はこちらへご連絡ください。


 

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