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世界を変える!テクノロジーを活用して、誰もが設計者になる社会を目指す(VUILD 秋吉浩気)/10代のみんなへ伝えたい、空間づくりの仕事 Vol.2

駅や学校などの大きな建物から、自分の家まで。わたしたちが日常の大半を過ごしている「空間」をつくる仕事には、どのようなものがあるのでしょうか。さまざまな空間づくりの場に人材を派遣している丹青ヒューマネットから、中学生や高校生のみなさんに向けて、空間に関わる仕事を伝えるインタビュー企画をお送りします。今回はデジタルファブリケーションを使ったものづくりや空間づくりを通して、誰もが建築をつくることができる世界を目指しているVUILDの秋吉浩気さんにお話を伺いました。わからない言葉は調べたりしつつ、ぜひそれぞれの仕事の面白さを感じてみてください。何かの興味が生まれるきっかけになりますように。


「Under 35 Architects exhibition 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会2020」会場にて

文:吉岡奈穂 取材・編集:岩崎美紀(丹青ヒューマネット)

公開日:2021/1/19

 10代のみんなへ伝えたい、空間づくりの仕事 

VUILD 代表取締役 秋吉浩気
--PROFILE


アーキテクト/メタアーキテクト。1988年大阪府生まれ。芝浦工業大学工学部建築学科にて建築設計を専攻。慶應義塾大学大学院ソーシャルファブリケーションラボにてデジタルファブリケーションを専攻。デジタルテクノロジーによって建築産業の変革を目指す設計集団「VUILD」CEO。SDレビュー2018、2019入選、Under 35 Architects exhibition Gold Medal賞(2019)、グッドデザイン金賞(2020)などの受賞歴がある。

 


 

小中高、どんな子ども時代でしたか?

6歳まで大阪で育ったあと東京へ引越し、目黒区立宮前小学校に入学しました。この小学校は建築家が作ったもので、教室と廊下の境がなかったり、クラスごとに庭があったり、建築当時は年間3000人の見学者が来るような珍しい造りをしていました。大使館が近かったことから外国人の生徒も多くて、先入観なく物事や人間を見るような環境で、自由に楽しく過ごしたと思います。逆に中高は校則も厳しくて、感性は抑圧されたような6年間だったのですが、それも含めて「環境のあり方、空間のあり方は、人生に大きな影響を及ぼす」ということに気づいたと思います。

 

建築家を目指したきっかけは?

中高は部活中心の生活で、受験勉強に乗り遅れた感じもあり、結局浪人して予備校へ通いました。漠然とアートや建築などの分野に興味を持っていて、イベントに参加したりしていましたが、建築家の原田真宏さんの作品である「ホームセンターで買える材料150万円で自分で建てられる家」と出会い面白いと思ったことが、この道に進んだ直接的なきっかけです。僕はインターネットの情報はフラットに見るだけで、やっぱり自分で体験をすることが大切だと思っています。少しでも興味や関心があれば見に行く、聞きに行く。身体を動かしていくことで、そのうちに何かの糸口が見えてくると思います。


いまどんな仕事をされていますか?

VUILDの事業領域は3つで、1つ目は3D木材加工機「ShopBot(ショップボット)」の販売です。 ShopBotはデータを入力すれば、誰でも自分が作りたいかたちに木材を加工できる機器で、いま国内では59台が 稼働中です。2つ目がデジタル建築の実装で、一級建築士事務所としての建築物の設計や施工を行っています。3つ目が「EMARF(エマーフ)」というソフトの開発です。つまりテクノロジーを活用して、誰もが設計者になれるような社会を目指すというのが僕たちの仕事です。いつの間にか建築は特別な人のものになってしまいましたが、数百年前まではそれぞれの地域ごとに、自分たちで場所をつくるのは普通のことだったはずです。僕はふたたび建築をみんなのものにしたいと考えているので、3つの事業を通して、自分で空間をつくり、自分の感覚や意思で生きていく人を増やすことに取り組んでいます。

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2020年5月にオープンした大型の建築工場の様子

 

ShopBotは何ができますか?

1995年にアメリカで誕生したShopBotは、パソコンで木材の加工を数値制御するCNCルーターで、500万円程度で本格的なデジタル木工をすることができます。データの作成は、3DモデリングツールのRhinoceros(ライノセラス)や、グラフィックデザインツールillustrator(イラストレーター)など建築・デザイン界ではおなじみのものなので、CNCルーターに初めて触る人でもある程度の操作はできます。専門的な話になりますが、2D切削、ポケット、穴あけ、3D切削、彫刻、旋盤など一台でいろんな加工に対応できるのがShopBotのいいところで、これらを組み合わせると住宅や家具などの大きなものから、食器などまでさまざまなものがつくれます。といってもやはり一般の人には難しいので、そこまで知識がなくてもものづくりができるようにサポートするためのソフトが「EMARF」です。

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世界各地でもっとも活用されている木材加工機器のshopbot

 

 

EMARFは何ができますか?

EMARFは、デスク、椅子、棚などの家具から建築物まで木製プロダクトのデザインからパーツに加工するまでの工程を、オンラインで完結できるクラウドサービスです。まずCAD上で設計データに「EMARFプログイン」を適用するか、DXFファイルを直接アップロードします。そうすると加工シミュレーションが行われ、そのプロダクトがいくらでできるのか費用が計算されます。ここまでは無料です。実際に加工を依頼すると、加工費と配送料が発生しますが世界にひとつの家具が1週間でできてしまいます。ぜひ活用事例を見て、試してみてください。誰でもものづくりができるということの意味が少しわかるかなと思います。

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EMARFとは?

 

 

仕事をする上で大切にしていることは何ですか?

直感です。イケるかイケないか、自分の感覚の中にささやかでも手触りがあるか。頭だけで考えてもモチベーションは上がらないし、何も感じないことを進めることはできない。あとはVUILDのミッションのひとつにもある「自律」ですね。ひとつのプロジェクトにもさまざまフェーズがあるので、全体を把握しながら自分のバリューが一番出せるところにそれぞれが打ち込むこと。一人ひとりが得意分野で最大の成果を出すように注力してこそ、会社でも、地域でも、本質的な連携ができていくと思っています。失敗をどれだけ繰り返せるかも大切です。1ヶ月で1回の失敗をするよりも、1ヶ月で10回の失敗をしたほうがノウハウは溜まる。慎重に時間をかけるというよりは、スピード感を意識しています。イメージしていたことが実現した瞬間はうれしいです。

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2020年グッドデザイン金賞を受賞した“まれびとの家 /photo Takumi Ota

 

 

どうやってモチベーションをキープしていますか?

誰もが持っているはずのつくる力を取り戻したい、建築をみんなのものにしたい、「つくる」と「生きる」がつながる社会にしたい、というのはビジョンなので揺るぐことはないです。ShopBotもEMARFも、インターネット世代の人たちを中心に、自分事として共感を持ってくれているので、そういうさまざまな人と関わることも楽しいですね。コロナ禍により家にいる時間が長くなったので、「自分がほしいのはどんな家具か、自分が心地よいのはどんな空間か」に興味がある方は増えていると思います。一方で仕事は18時には切り上げてそれ以降は家族と過ごしますし、毎日8時間は寝ています。「誰かに言われたから」ではなくて、自分の好きなことを自分で配分して過ごすこともモチベーションをキープするのに大切かなと思います。

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建築を通して社会を変えたいという同じ思いを持つスタッフたち

 

 

どのような未来にしたいですか?

自分たちでつくっていく心地よいコミュニティができたらいいなと考えています。父母ふたりで子育てを回していかなければならない、6〜15歳までの9年間は必ず小中学校に通わなければならない、収入を得るために苦役をしなければならないなど、いま起きていることを問い直してみたい。血縁などは超えて、感性とか感覚とかが合う人がそばにいるほうが単純に気持ちがいいし、お金ではないかたちで支え合っていけるような、小さなコミュニティがあちこちに生まれる未来が理想ではないかと思っています。身近な枠組みができれば、家を建てることも、食も、教育も、福祉も、それぞれの地域でカスタマイズできるかもしれない。常識や定型にとらわれず、人は誰もが自分の暮らしをつくっていけることを証明したいです。

 

 

10代のみなさんに対するメッセージをお願いします

自分の好きなことは、そんなに簡単には見つからないかもしれません。でも、試行錯誤したこと、紆余曲折したことは、ぜったいに裏切らない。その中に自分がやりたいこと、自分しかできないことの種が眠っています。普通に生活していて何も感じないという人はいないはずです。何かを感じたらSNSでつぶやく、友達に言う、それだけでも何かが始まっています。教科書にもネットにも、自分専用の答えは載っていない。だからとにかく行動してみてください。デジタルネイティブと言われる10代のみなさんは、大人とは明らかに違う知性と感性を持っています。大人たちは別の人類ぐらいに思って、自分の思うように進んでいいと思います。

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地元小学生参加のワークショップを開催し、駅前広場に設置するベンチを製作

 

 

 

——10代のお子さまを持つ親たちにメッセージをお願いします

僕の子どもはまだ小さいので、10代の子どもを持つ親の気持ちはそのときにならないとわかりません。でも、良いものに触れさせる機会を設けることは親の大切な役割だという気がしています。生まれてから10代までのもっとも多感な時期、豊かな感性を誰もが持っている時期に、文化的なもの、情緒的なものをたくさん見せること、世界の美しさを伝えること。そしてものづくりなどを通して、世界は変えられるという自信を与えること。義務教育くらいまでは、子どもに環境や場を与えられるのは、親にしかできないことも多くあります。経営にも通じることですが、マイクロマネジメントは人が自立する機会を奪ってしまうので、日々の行動を細かくマネジメントするというよりも、一歩引いてその部分に労力を使うのが良いと思います。

 


 

 

——VUILDを訪問して

設計と作り手の両方を、デジタルツールを使って実装しているVUILD代表の秋吉さん。初めてお会いしましたが、世の中にあると良いなと思っていることを成してしまう、内面の強さを持っている優れた方だと感じました。理想を思い描いても、そこに近づくために行動を起こしていくエネルギーを持ち続けられる秘訣は、きっと睡眠にあるに違いない(笑)。 見学させていただいた工場は、若い人が機械を操作しており、普段知る木工場とは全く違います。家にいることが増えた今、洗面台に・・・玄関に・・・ あれこれ思い描いたものが作れたら嬉しいだろうなとEMARF(エマーフ)を ダウンロードしてみました。 秋吉さんの考えた建築や空間が、どのように活かされていくのかも注目したいと思います。


株式会社丹青ヒューマネット

石畑 和恵

 

株式会社丹青ヒューマネットは、「働く人を応援し、幸せになる」をミッションとし、建築・インテイリア業界へ人材を輩出しています。人材のことで課題をお持ちの企業様、新しい働き方をお探しの方はこちらへご連絡ください。


 

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