対話と経験を重ねながら、空間をかたちにしていく。施工管理として現場で味わう達成感 - 空間づくりの現場から vol.2

写真:寺島由里佳 取材・文:堀合俊博 編集:丹青ヒューマネット
公開日:2026/2/12
さまざまな現場で働く施工管理者の方々に、”自分らしい働き方”についてうかがうインタビューシリーズ、「空間づくりの現場から」。第二回目となる本記事では、三井デザインテック株式会社で働く、池田倫弥さんにお話しを伺いました。
オフィス・ホテル・住宅といった複数の領域をまたぐ「クロスオーバーデザイン」と技術力を活かし、多様な空間の創造と提案に取り組む三井デザインテック。池田さんはもともと丹青ヒューマネットのスタッフとして同社に派遣されていた経緯があり、5年間の経験を積んだのちに正社員として転籍されました。現在はスペースデザイン事業本部で働く池田さんに、空間づくりの仕事を目指すきっかけから、転籍に至った経緯、施工管理の仕事に感じているやりがいについて伺いました。
文系から空間づくりへの現場へ
──池田さんが空間づくりの仕事に関心を持ったきっかけは何でしたか?
もともと私は大学時代、史学科で日本史の研究をしており、卒業後は博物館の学芸員になることを目指していました。ところが、大学4年時の就活の際に地元の博物館の方とお話しする機会があり、そこではじめて空間デザインという仕事があることを知り、この業界を目指したいと思うようになったんです。
当時は建築に必要な理系の知識はほぼなかったんですが、大学卒業後は建築系の派遣会社に就職し、施工管理者として派遣先のゼネコンで現場経験を積みました。その後、百貨店やショッピングモールの店舗を手がける施工会社に転職してからは空間デザインの現場に携わるようになり、徐々に施工管理者としてステップアップすることができたと思います。
──文系出身としてこの仕事を学ぶ上での苦労はありましたか?
ゼネコンで働いていた頃、エレベーター棟を新設する現場を担当する機会があったんですが、コンクリートの密度計算といった理系の知識が必要な場面があり、もともと苦手意識もあったため、やり方を覚えるまでにそれなりに時間がかかりましたね。建材の種類や施工方法等、新たに覚えなければならないことが多い分の苦労もありましたが、実際に経験を重ねていくなかで、知識の有無以上に、コミュニケーションや対話を通じて仕事を進めていくことのほうが、施工管理においては大事なんだと感じるようになりました。

現場に入りたての頃は、協力会社の方々や職人さんとどのようにコミュニケーションを取ればいいのか悩む場面もあったものの、施工の進め方や各作業のスケジュール感等、わからないことがあったときには現場の方々に積極的に聞くようにしていたので、自分なりのやり方で仕事を覚えることができていたように感じています。出身学部はそこまで関係ないと思いますし、コミュニケーションでカバーできることはたくさんあると思いますね。
現場の経験が仕事の向き合いかたを作っていった
──その後、丹青ヒューマネットに入社された経緯をお聞かせください。
もともと丹青ヒューマネットのグループ会社である丹青社については、文化施設等の空間デザインを手がける会社として、学生時代から知っていました。自分が思い描く将来像としては、いつか文化施設に携わることができる仕事がしたいと思っていたので、それを軸に転職先を探す中で出会ったのが、丹青ヒューマネットでした。面接の際に、派遣先での就労時のバックアップ体制について丁寧に説明いただいたのがとても印象的で、就労環境やワークライフバランス、給与等の面で、これまでの職場と比較して安心感を持てたことが、入社を希望した理由として大きかったです。
──その後、派遣先の三井デザインテックにて5年間の経験を積まれてから、正社員として転籍されています。当時の経緯についてお聞かせください。
三井デザインテックでは、毎月上長との1on1の面談があるんですが、私の働きぶりや現場の納め方を評価いただき、「社員になってさらにステップアップしてほしい」とお話をいただきました。一緒に仕事を進めているチームの居心地もよかったですし、業務の幅が広がることによる責任も生じますが、ぜひ挑戦したいなと思い、転籍を決めました。
丹青ヒューマネットの担当の方には、退社の手続きの際にスムーズに対応いただき、最後まで面倒を見ていただいた感覚があります。それ以前からも、毎月やり取りをさせていただく中で、こちらの状況をいつも気遣っていただけていたのがうれしかったですね。職業柄、どうしても夜の現場が続いてしまうこともあるんですが、「寒くなってきたので体調に気をつけてくださいね」といったお声がけをいただき、常に安心感を持って働くことができていました。
──転籍されてからの仕事で印象に残っているものはありますか?
IT企業の入居工事を担当させていただいた物件が印象に残っています。これまで三井デザインテックで仕事をしてきた中でも最大規模の物件で、海外から輸入した部材やサステナビリティを意識した建材等、内装にかなりこだわっており、社内のデザイナーや協力会社の方々と施工方法について話し合いながら業務を進めていきました。

転籍する以前は、基本的に現場管理が主な業務だったので、デザイナーとのやりとりの経験がなく、慣れるまでには少し時間がかかりました。施工管理者はデザイナーがイメージしている通り空間を具現化しなくてはならないので、部材や建材の種類を新たに覚えたり、施工管理者の立場だけでは判断できない納まりについて、実作業を担当している協力会社の方々にアドバイスをいただいたりしながら、少しずつ仕事の進め方を理解していきました。
日々の作業が進むにつれて、徐々に現場の雰囲気や表情が変化していく様子が感じられ、手間のかかる作業が多かった分、美しく仕上がったときの達成感も大きかったです。竣工の際にはとても感慨深かったことを覚えています。はじめて使用する仕上げ材等も多く、その後の現場にも活きる経験値を積むことができました。
現場を整え、空間をかたちにしていく仕事
──これまでの現場において、施工管理者としてのやりがいを感じた場面はありましたか?
以前、サテライトオフィスの入居工事にて、雑居ビルの一角にブースを立てて作業をする現場があったんですが、作業スペースがとても狭く、施工管理の立場としては、作業員の方々が仕事のしやすい環境を作る必要がありました。その際に、それぞれの作業スケジュールや必要なスペースについてヒアリングし、現場の交通整理をした上で作業計画を立てたところ、その後の現場をスムーズに進めることができました。後日、協力会社の方から「池田さんの現場、とてもやりやすくて助かったよ」とおっしゃっていただけたのがうれしかったですね。他の物件で同じ方とご一緒した際にも「池田さんがいるなら安心です」と言っていただき、良好な関係性を築くことができた実感がありました。

また、施工管理者はデザイナーが作成したCGパースを目指して現場で具現化していきますが、途中経過を記録するためにパースと同じアングルで写真を撮影する中で、徐々に現場の空間がパースに近づいてきているのがわかると、この仕事ならではの手応えを感じることができます。最終的に完成した空間とパースを見比べたときには達成感がありますし、施主やクライアントよりも先に空間が完成した瞬間に立ち会うことができるのは、施工管理の仕事の特権だと思います。
──最後に、空間づくりの仕事に興味のある方へのメッセージと、池田さんが今後取り組んでいきたいことをお聞かせください。
施工管理はどうしても厳しい仕事だという印象を持たれる方が多いと思いますし、実際にそういった現場を経験することもありますが、お客さまや協力会社の方々から感謝の言葉をいただける場面が多い仕事だと感じています。そういった場面を経験する度に、これからもこの仕事を続けていきたいなと感じることができます。やっぱり空間が完成したときの喜びは、他には代え難いものがありますね。
私が所属しているスペースデザイン事業本部では、おもにオフィス空間を担当することが多く、ワークスタイルにおける最先端のトレンドを間近で体験できるところも魅力だと思います。近年フリーアドレスを採用している企業が増えてきていますし、従来のオフィスとは異なるレイアウトを採用した上で、新しい働き方を取り入れている企業も多いです。三井デザインテックの事業でも、プランニングと設計において、オフィスのあり方だけではなく、働き方そのものをお客様に提案する場面も増えてきているので、我々施工管理のチームは、現場でそれらを具体化する役割を担っていきたいと思います。さらに今後は、もともと学生時代から関心のあった企画職やプランニングの領域にも手を伸ばしていきたいですね。

あとがき
池田さんのお話を通して伝わってくるのは、現在の池田さんの仕事を支えているのは、特別な出来事や肩書きよりも、現場で積み重ねてきた日々そのものだということです。
最初からすべてが思い通りに進んでいたわけではなく、戸惑ったり、立ち止まったりしながらも、一つひとつの経験を自分の中に取り込んできた過程が印象的でした。
施工管理の仕事は、成果がすぐに見える場面ばかりではありません。
しかし、現場での対話や調整、試行錯誤の積み重ねが、いつの間にか次の仕事を支える力になっていきます。
完成した空間に立ち会い、その過程を知っているからこそ味わえる達成感は、この仕事ならではのものだと言えるでしょう。
働き方や立場は人それぞれですが、現場で得た経験は、どの段階にいる人にとっても、次の一歩を考えるための確かな材料になります。
このコラムが、いま現場で仕事に向き合っている方にとって、ご自身の歩みを静かに振り返るきっかけとなれば幸いです。
株式会社丹青ヒューマネット
児玉 芳久
株式会社丹青ヒューマネットは、「働く人を応援し、幸せになる」をミッションとし、建築・インテイリア業界へ人材を輩出しています。人材のことで課題をお持ちの企業様、新しい働き方をお探しの方はこちらへご連絡ください。








