素材と仕上げに向き合い、臨機応変に現場を納める施工管理の仕事 - 空間づくりの現場から vol.1

写真:寺島由里佳 取材・文:堀合俊博 編集:丹青ヒューマネット
公開日:2026/1/15
施工管理者としてさまざまな現場で働く丹青ヒューマネットのスタッフに、”自分らしい働き方”についてうかがうインタビューシリーズ、「空間づくりの現場から」が新たにスタートします。第一回目となる本記事では、派遣先の株式会社エス・ピー・ディー明治にて施工管理者として働く、堀江敏男さんにお話しを伺いました。
2023年に創業150周年を迎えた「明治座」のグループ会社として、昭和39年に設立された同社は、さまざまな施設の企画・設計・施工と、テレビ・イベントにおける美術セット(大道具)を手がける、空間創造の専門会社です。2022年より同社の現場で活躍している堀江さんに、空間づくりの仕事を目指すきっかけから、丹青ヒューマネットの派遣スタッフとしての働き方、施工管理のやりがいについて伺いました。
華やかな空間への関心からディスプレイ業界へ
──堀江さんが空間づくりの仕事に興味を持ったきっかけはなんですか?
ちょうど僕らが学生の頃はバブル景気で、街中に華やかな空間が多く見られました。専門学校時代はインテリアデザインを学んでいたので、そういった空間に足を運びながら、いつかこんな仕事をしてみたいなと思っていました。
──卒業後はどのような会社に就職されていたのでしょうか?印象に残っている仕事があれば教えてください。
卒業後はディスプレイ会社に就職し、はじめの3年間は施工管理の仕事を経験しました。当時はデザイナーを目指すにしても、最初はそうやって現場に出ることが多かったんです。イベントや展示会の仕事が多い会社で、なかでも化粧品メーカーとの仕事が印象に残っていますね。六本木で開催される展示会の設計・施工を担当したことがあったんですが、美しさを追求するために、他の物件とはまったく違うレベルのクオリティで仕上げる必要がありました。クライアントのご担当者がとても詳しい方で、艶の出し方ひとつとってもちょっとした仕上げの違いにこだわり、細かなやりとりを繰り返しながら決めていきました。大変ではありましたけど、こちらの提案が通った時にはうれしかったですし、良い経験になりましたね。
──そういった仕事に必要な知識を身につける上で、どのようなことを実践されてきましたか?
やっぱり現場で身をもって学んでいくことがほとんどでしたね。当時は厳しい現場も多かったんですが、良い先輩に恵まれて多くのことを学びましたし、一つひとつのことを先輩に聞きながら、自分自身でも調べて学んでいきました。
一つひとつの工程を丁寧に積み重ねる、エス・ピー・ディー明治の現場
──その後、丹青ヒューマネットに入社した経緯を教えてください。
横浜の実家で暮らす親の介護をする必要があり、地方出張が難しくなってしまったため、より融通の効く職場を探すなかで出会ったのが丹青ヒューマネットでした。
いまは派遣先のエス・ピー・ディー明治にて、都内の現場を中心に施工管理者として働いています。丹青ヒューマネットの推薦で決まった派遣先でしたが、歴史の長い会社として以前から知っていましたし、過去の現場でも何度か社員の方にお会いしたことがありました。

これまでいろんな施工会社と仕事をしてきましたが、エス・ピー・ディー明治は一つひとつの工程を丁寧に積み重ねながら現場を納めていく会社だと感じています。それは実際に入社してからも感じますね。現場の状態を見ていてもわかりますし、施工図もバシッと書いていて、現場全体への入り込み方に一貫性があると感じました。基本的に同じ協力会社や職人さんと一緒に現場を進めていくため、阿吽の呼吸で連携が取れている会社だと思います。
──丹青ヒューマネットの派遣スタッフとして仕事をはじめてから、働きやすさに関してはどのような変化がありましたか?
丹青ヒューマネットは福利厚生が整っていて、夜間の現場は多少残業が発生することもありますが、基本的には現場を計画通りに終え就業時間内に業務を完結できています。また、派遣元である丹青ヒューマネットの担当者からは、定期的に状況確認の連絡があり、数ヶ月に一度は実際に現場にも訪問してもらえるため、安心して仕事に取り組めています。
デザインの意図を具現化するために、施工管理が果たす役割
──エス・ピー・ディー明治に配属されてからの仕事で印象に残っているものはありますか?
働きはじめてから最初に担当した、外資系の企業のオフィスを作る物件が印象に残っています。なかなかのボリュームの仕事でしたが、それなりの予算をかけたゴージャスな造りが特徴で、外資系ならではのこだわりの詰まったオフィスでした。本国との連携やスケジュール調整には苦戦したものの、備え付きのバーカウンターや和室を意識した空間など、普段はなかなか使わないような素材や仕上げばかりで、やっていて面白かったですね。現場では常に協力会社の方や職人さんが20~30人ほど溢れているような状況で、できあがった時には達成感がありました。
──普段仕事を進める上ではどのようなことを意識していますか?
施工管理者としては、なんとかデザインのコンセプトや意匠性を守りながら仕事を進めていく必要があるんですが、意匠性だけが重視されてしまっていたり、どうしても実現が難しいデザインだったりする場合には、こちらからデザイナーに意見をお伝えするようにしています。

もちろん、デザイナーによってさまざまではありますが、なかには図面に書かれている素材が、本来の用途とは異なる場所に指定されてしまっている場合があるんです。人の手が触れる場所に使用する素材ではなかったり、そもそも室内エリア向けのものではなかったり。もし図面を見て気づいたことがあれば伝えるようにしていますし、なにかこちらで教えられることがあれば、直接声をかけるようにしています。もちろん、デザイナーとして通したい部分はあるはずなので、どんな素材なら実現するのか、こちらから代替案をお渡しすることもありますね。
また、基本的には施主さんあっての仕事なので、施主さんの意向とデザイナーの考えが一致しているかどうか、施工管理の視点からきちんと考える必要があります。もしそこにずれが生じてしまっている場合は、お節介かもしれないですが、こちらから指摘することもありますね。さらには、いま作ろうとしている空間が、実際にどのような使われ方をする予定なのかを知ることで、プラスアルファの提案につなげていくことも、施工管理者にとって必要な仕事です。物件によっては、直接施主さんとのやりとりができない場合もありますが、PMやデザイナーにその点を聞くことで、こちらから別の素材を提案する場合も多々あります。
経験を積むことで見えてくる、施工管理の面白さ
──施工管理者として働く上での、ご自身のこだわりについて教えてください。
特にこだわりというわけではないですが、臨機応変に対応しないことには現場が納まらないので、それは常に心がけてやっていますね。現場にはさまざまな人がいますし、何かこちらで気づいたことがある場合には、「こうした方が良いんじゃない?」とやんわり声をかけるようにしています。
──堀江さんのように、臨機応変に対応できるようになるには何が必要だと思いますか?
それはもう、とにかく場数を踏むことですね。しっかりと経験を積んでいくことで、その物件のどこに力を注ぐ必要があるのかがわかってきますし、逆に必要以上にこだわりすぎないための、力の抜き加減もわかってきます。
──最後に、これから施工管理者を目指す方へのメッセージをお願いします。
なにより施工管理者は空間づくりの現場の責任者なので、経験を積まないことには務まらない仕事ですが、デザイナーが思い描いたものを具現化するために、あらゆる細かなことを決めていく過程にはやりがいがあると思います。空間づくりはなかなか大変ではありますが、めげずに続けていくと、いろんな面白さに出会える仕事です。
僕自身、ある物件を終えた時にクライアントからお褒めの言葉をいただいたことがあり、その時にこの仕事のやりがいを実感することができました。そういった言葉が聞けると、やっぱりこの仕事を続けていきたいなと感じますね。若手の方々にもぜひ、継続した先にある施工管理の楽しさを感じてほしいと思います。

あとがき
本稿を通じて伝わってくるのは、堀江さんが長年にわたり現場で培ってきた、施工管理者としての確かな姿勢と誠実さです。
素材や仕上げに対するこだわり、関係者との丁寧な対話、そして現場ごとに最適解を探り続ける柔軟さ。その一つひとつから、単に工程を管理するのではなく、「空間づくりの責任者」として現場に向き合ってきた経験の厚みが感じられます。
今回のインタビューを通して、読者の皆さまには、「誰もが最初は失敗を重ねながら現場で学んでいく」ということを感じ取っていただければと思います。
私たちが携わるディスプレイ業界は、マニュアル化が非常に難しく、臨機応変な対応力や、幅広い知識の引き出しが求められる仕事です。
日々の業務の中で小さな失敗を重ね、トライ&エラーを繰り返していく。その積み重ねの先にこそ、お客様や設計者から信頼される施工管理者としての成長があります。
これからこの業界を目指す方、あるいは現在就業中で失敗を恐れている方には、「小さな失敗こそが自分の実力になる」ということを、ぜひ知っていただけたら幸いです。
株式会社丹青ヒューマネット
児玉 芳久
株式会社丹青ヒューマネットは、「働く人を応援し、幸せになる」をミッションとし、建築・インテイリア業界へ人材を輩出しています。人材のことで課題をお持ちの企業様、新しい働き方をお探しの方はこちらへご連絡ください。








